生涯給与の1年前からの伸び率が大きい企業は、財務上なにか特徴があるのだろうか。
なるべくシンプルな単年度の財務情報を利用して将来給与が伸びる可能性を探れるよう、まずは前回の、生涯給与推計 1月、2月決算企業アップデートの掲載企業の財務上の特徴を探ってみました。
生涯給与推計 1月、2月決算企業アップデート は→こちら
ここでは、4つの財務比率を見てみたいと思います。
① ROE | 当期純利益を純資産合計で割った指数。投下資本に対して企業の稼ぐ力を示す総合的な指数といえる |
② 配当性向 | 純利益をどれだけ株主配当に向けているかの割合。 |
③ 現預金/売上高比率 | 現預金(同等物も含む)の売上高に対する比率。 |
④ 経費率 | 一般管理販売費用の売上高に対する比率。 |
生涯給与 上昇率の大きな企業(1月、2月決算企業)の財務比率
銘柄 コード |
会社名 | 生涯給与 (億円) |
上昇率 | 経費率 | 現預金/ 売上比率 |
配当性向 | ROE |
8260 | 井筒屋 | 1.12 | 16.2% | 22.1% | 7.8% | 0.0% | 15.7% |
8008 | ヨンドシーホールディングス | 1.65 | 14.8% | 46.6% | 1.3% | 25.8% | 7.2% |
6058 | ベクトル | 2.05 | 12.5% | 40.8% | 19.8% | 11.0% | 20.3% |
7829 | サマンサタバサジャパンリミテッド | 1.76 | 11.6% | 58.5% | 7.9% | 33.3% | 9.9% |
2337 | いちごグループホールディングス | 3.05 | 11.3% | 19.1% | 59.2% | 11.2% | 5.3% |
3071 | ストリーム | 1.73 | 11.1% | 13.7% | 2.9% | 0.0% | -10.8% |
6432 | 竹内製作所 | 1.81 | 11.1% | 10.5% | 18.2% | 5.6% | 12.6% |
5993 | 知多鋼業 | 1.67 | 10.8% | 9.1% | 24.8% | 11.7% | 5.9% |
6654 | 不二電機工業 | 2.20 | 10.7% | 24.4% | 133.3% | 65.7% | 2.6% |
9743 | 丹青社 | 2.76 | 10.5% | 12.8% | 9.2% | 9.6% | 18.2% |
7847 | グラファイトデザイン | 1.88 | 9.9% | 22.7% | 75.2% | 15.0% | 27.9% |
7649 | スギホールディングス | 2.50 | 9.2% | 22.1% | 12.2% | 19.2% | 11.2% |
8200 | リンガーハット | 2.58 | 9.1% | 63.3% | 4.0% | 30.9% | 6.5% |
4287 | ジャストプランニング | 2.06 | 8.8% | 22.8% | 128.1% | 12.9% | 30.0% |
9861 | 吉野家ホールディングス | 2.39 | 8.5% | 61.5% | 10.5% | 147.1% | 1.6% |
2659 | サンエー | 1.75 | 8.4% | 27.4% | 19.0% | 14.1% | 8.0% |
3027 | レデイ薬局 | 1.62 | 8.1% | 24.7% | 3.4% | 14.3% | 14.1% |
8237 | 松屋 | 2.02 | 8.1% | 23.9% | 3.4% | 9.9% | 8.3% |
6734 | ニューテック | 2.11 | 7.7% | 22.5% | 77.7% | 26.5% | 7.2% |
3246 | コーセーアールイー | 2.10 | 7.4% | 20.1% | 36.8% | 18.9% | 19.7% |
(注1) 生涯給与シミュライズ給与カーブモデルによる推計値
(注2) 財務比率については、有価証券報告書等より算出。連結対象企業は連結、それ以外は個別諸表の数値による
ROEは、企業の総合的な稼ぐ力、配当性向は企業の株主への利益還元姿勢、また、現預金/売上高比率はビジネスの規模に対する保有現金比率(余力)表し、いずれも数値が高い場合、従業員への給与支払い余力の高さを一定程度あらわすと考えられます。また、経費率は、支払給与を含めた管理販売費の規模であり、適度な水準にコントロールされていることは企業のビジネスが順調に進んでいることを示すと考えられます。
上記表をみてみると、上位20社の内、利益がプラスの企業のROEの平均は12%強、上位20社の内、配当ゼロだった企業を除いた配当性向の平均は約27%、いずれも日本の上場企業の平均値をかなり上回っており、給与伸び率を見ていく際に有意な指標である可能性があると言えます。
現金比率や経費率については、ROEが低い企業が現金比率の高さや経費率の低さでカバーして、給与を伸ばしていると考えられるケースもあるように見えますが、指標の優位性を見出すにはもう少し多くのサンプルを分析する必要がありそうです。
シミュライズでは、今後さらに多数の企業群について総合的な分析を進め、給与の伸びについても指標化して公表していきたいと思います。