親の介護はどれくらい費用がかかる?利用できる制度を知っておこう

2023/08/31

自分の老後生活に向けて準備をしている方は多いかと思いますが、「親の介護」についてはいかがでしょうか。親の介護が必要になったとき、介護についての基礎知識や、介護にまつわるお金の知識がなく困る場合があります。

事前に必要な知識をつけておくと、いざ親の介護が必要になったときでも、焦らずに向き合えるはずです。今回は親の介護が必要になったときに、どれくらい費用がかかるか、経済的な助けとなる制度はどのようなものがあるかなどを解説します。

親の介護はいくらかかる?

まずは、親の介護が必要になったとき、何にどれだけ費用が必要なのかを確認していきましょう。

公益財団法人生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査(令和3年度)」によると、介護に要した月々の費用は、1ヶ月あたり平均で8万3,000円です。また、住宅改造や介護用ベッドなどの購入など一時的にかかった費用は平均74万円となっています。

月々8万3,000万円といっても、費用は介護をする場所によって差があります。介護をする場所は、大きく分けて「在宅」と「施設」の2種類があります。
介護する場所ごとに月々の費用平均をみると、在宅の場合は4万8,000円、施設の場合は12万2,000万円となっています。

なお、介護をおこなった人のうち、56.8%が在宅、41.7%が施設(その他、不明:1.5%)と答えており、在宅の場合が多いものの、場所についてはおおむね同じくらいの割合と言えるでしょう。では、二つの違いは何なのか、それぞれの特徴を詳しくみていきましょう。

在宅介護

在宅介護とは、自分の家や親や親族の家で介護をおこなうことを指します。在宅介護で必要になる費用は大きく3つあります。

一つ目は、介護にまつわる日用品です。おむつ、消毒類、清拭シートなどが挙げられます。それ以外にも、光熱費や食費などの生活費が今まで以上にかかる可能性があります。

二つ目は、福祉用具のレンタルや購入です。例えば、車いす、歩行器、介護ベッド、体位変換器、認知症患者向けのセンサー器具などがあります。

三つ目は、住宅修繕費です。トイレや浴室など、手すりなどを設置したり段差をなくすために、自宅をバリアフリー化することがあるでしょう。

また、在宅介護は施設介護に比べて費用が抑えられることがメリットですが、介護をする側に身体的、精神的に負担がかかるため、介護スタッフのサポートを受けられる居宅サービスを利用することがあります。

例えば居宅サービスには、介護スタッフが自宅まで来てくれる訪問介護サービスがあります。自宅にて食事介助や服薬介助、排泄、入浴などのサポートを受けられます。

他にも、自宅からデイサービスやデイケアといった施設へ自宅から通って利用する通所サービスがあります。ここでは食事や入浴などの介助以外に、レクリエーションや機能訓練を行ってもらうこともできます。

さらに、短期間の間だけ介護施設に生活サポートをお願いできる短期入所サービスもあります。短期入所の中には、介護ケアのみだけではなく、医師や看護師からの医療ケアを受ける「短期入所療養介護」というものもあります。

いずれも介護度やどういった介護サービスを受けるか、どういった部屋のタイプを利用するかにより費用が異なります。

施設介護

名前のとおり、自宅ではなく老人ホームなどの介護施設に入って介護サービスを受けることを指します。
老人ホームには大きく分けて公的施設と民間施設の2種類があります。
さらに、入居する方の介護度や費用などによって種類はさまざまです。

<民間施設>

  • 介護付き有料老人ホーム
  • サービス付き高齢者向け住宅
  • グループホーム、など

<公的施設>

  • 特別養護老人ホーム
  • 介護老人保健施設
  • ケアハウス、など

民間施設と公的施設の代表的なものの特徴と費用の相場をみていきましょう。

介護付き有料老人ホームは、自立している方から介護度が重い方まで幅広い人が利用できます。24時間介護スタッフが常駐しているため、介護サービスが手厚い点が特徴と言えるでしょう。
しかし比較的費用が高くなり、入居時の費用の相場は600万円前後、月額費用の相場は24万円前後(入居時費用あり)となっています。

サービス付き高齢者向け住宅は、要介護度の低い方や要介護ではない要支援の方が中心です。賃貸形式の住宅のため、有料老人ホームよりも比較的費用が抑えられます。
入居時の費用の相場は19万円前後、月額費用の相場は17万円前後(入居時費用あり)となっています。

特別養護老人ホームは、介護を受けつつ長く生活をする場所で看取りを行っている施設もあることが特徴です。入居条件は原則要介護3〜5とされています。
入居時の費用はなく、月額費用の相場は10〜14万円程度です。

介護老人保健施設は、特養とは違い、施設でリハビリをしながら自立を支援し、在宅復帰を目指す場所です。入居条件は原則要介護1〜5です。
入居時の費用はなく、月額費用の相場は9〜15万円です。

※上記はあくまで相場で施設や場所、サービス内容によって費用は異なります。

このように介護サービスにはさまざまな種類があります。事前に基礎的知識を知り、おおよそ必要な費用を認識しておきましょう。

親の介護のために利用できる制度は?

次に、介護にまつわる経済的な負担を減らす制度をいくつかご紹介いたします。

公的介護保険

公的介護保険とは、利用者の負担が介護サービスにかかった費用の1割(一定所得以上の場合は2割または3割)になる制度です。

65歳以上の方は要支援・要介護状態になった場合、40歳〜64歳の方は末期がんや関節リウマチなど、指定された病気が原因で要支援・要介護状態になった場合に利用することができます。

居宅サービスを利用する場合には、支給限度額が定められており、これ以上を超えると1割負担ではなく超えた分が全額自己負担となります。この居宅サービスは、訪問介護サービスや通所サービスだけではなく、福祉用具のレンタル・購入、在宅改修費などもあてはまります。
支給限度額は下記のとおり、要介護度別となっています。

要支援1 50,320円
要支援2 105,310円
要介護1 167,650円
要介護2 197,050円
要介護3 270,480円
要介護4 309,380円
要介護5 362,170円

厚労省「サービスにかかる利用料」を基にFPサテライトにて作成

また、介護保険施設を利用する場合は、施設サービス費用は基本的に1割ですが、居住費・食費・日常生活費は自己負担となります。

高額介護サービス費

高額介護サービス費とは、1ヶ月に支払った利用負担の合計が、負担限度額を超えた場合に、超えた分が払い戻される制度です。公的介護保険を利用したうえでも自己負担額が高額となった場合に利用できます。例えば、市町村民課税~年収約760万円の場合、負担の上限額は44,400円です。

介護休業・介護休業給付金

特に在宅介護をおこなう場合、親の介護のために仕事を辞めることを検討する方もいるでしょう。その際には、介護休業という制度を利用して、家族の介護のために仕事を一旦休むことが可能です。

休める期間は、対象家族1人につき3回まで、通算93日までです。
その間、会社からの賃金はなくとも、介護休業給付金とよばれる手当を受けることができます。介護休業給付金の額は休業開始時賃金月額の67%です。

仕事を休んでも収入がゼロにならないのは安心ですよね。介護休業を受けられるかどうかは、いくつか利用条件があるため必ず事前に確認しましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。介護が始まる前に、事前に介護に関する知識やおおよそ必要になる費用の金額を知っておくことで、親の介護が必要になったときに落ち着いて対応できます。また、利用できる制度を確認して積極的に活用し、経済的負担を軽減しましょう。

 

<執筆者>

森島  静香(MILIZE提携FPサテライト株式会社所属FP)
京都出身、大阪在住。
人材紹介会社勤務。
キャリアカウンセラーとして顧客の転職活動を支援中。
中立の立場で顧客の相談に乗る中で、お金に関するより専門的な知識を身につけたいと考え、FP資格を取得。
プライベートでも2児の母として、育児を経験しており、顧客目線でわかりやすい情報を届けるFPを心掛けている。

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