国民年金を未納し続けるとどうなるの?知っておきたいデメリット

2024/02/19

一般的な会社員や公務員であれば、給与から天引きされる国民年金の保険料。普段気に留めて確認することもないのではないでしょうか。

厚生労働省年金局が公表している保険料納付率に関する調査結果を参照すると、
令和4年度(令和2年度保険料分)の最終納付率は80.7%となっており、国民年金の対象となる被保険者のうち、約2割が未納の状態となっています。
(参考:「令和4年度の国民年金の加入・保険料納付状況

国民年金は、20歳以上60歳未満の人が老後資金である年金を将来受給するために加入し、所定の保険料を一定期間納付する制度です。

国民年金が未納となると、将来受給する年金総額が減少したり、保険料の強制徴収の対象者となったりすることもあります。

ご自身の将来の資金形成に影響する公的年金保障制度について再確認し、国民年金が未納となった場合の措置とデメリットを確認してみましょう。

個人年金保障制度の種類と対象となる被保険者

公的年金制度は、20歳以上60歳未満の全国民が対象となる国民年金(基礎年金)制度と、会社員や公務員が対象となる厚生年金制度に大別されます。

被保険者は対象者によって、第1号被保険者から第3号被保険者に分けられます。

第1号被保険者は自営業者、学生、農業従事者、無職の人などが該当し、自分で市区役所に届出を行い、納付書や口座振替などによって自分で納付する必要があります。

第2号被保険者は、会社員や公務員が該当し、国民年金と厚生年金の両方の制度に加入することになります。原則、給与から天引きされるため、未納になることは基本的にありません。

第3号被保険者は、第2号被保険者に扶養される、年収130万円未満の配偶者となります。第2号被保険者の勤め先から届出が行われ、第2号被保険者の保険料と合わせて納付されます。

自営業や学生で第1号被保険者の方や、第3号被保険者であったが扶養から外れて第1号被保険者となった方は、届出を行わないと未納となるため、特に注意が必要です。

国民年金を未納する被保険者への段階的措置

国民年金が未納となっている場合、原則、どのような措置が取られるのでしょうか。主に2つのケースに分けてみていきます。

⑴納付免除・猶予の特例が認められる場合

所得が著しく減少した、あるいは失業した場合等に、「国民年金保険料免除・納付猶予制度」を利用することができます。未納の状態にせず、別途申請を行う必要があります。

保険料免除制度では、本人・世帯主・配偶者の所得が一定額以下の場合や失業した際に申請を行い、所定の手続きを経て承認されると、全額、4分の3、半額、4分の1の4種類で保険料の納付免除が適用されます。

保険料納付猶予制度では、20歳から50歳未満である本人・配偶者の所得が一定額以下の場合に、申請書の提出後に承認されると、保険料の納付が猶予されます。

例えば、パート・アルバイト等で厚生年金未加入の方、学生の方、会社を退職された方、所得の減少で納付が難しい自営業者などは、この制度の対象者となり、保険料免除・納付猶予制度を利用することができます。

⑵強制徴収となる場合

国民年金の保険料が給与から天引きされない第1号被保険者は、納付対象月の翌月末日までに所定の方法で保険料を納める必要があります。

仮に、期限までに納付が確認されなかった場合、納付勧奨が日本年金機構職員より実施され、電話や文書による納付勧告が行われます。

国民年金保険料を払う能力がありながら納付されなかった場合、指定期限を示した最終催告状が送付され、期日までの納付が要求されます。それでも納付されなかった場合、督促状が送付されます。

督促状にも従わなかった場合、財産の差押えが行われます。差押えは連帯納付義務者(世帯主および配偶者)に対しても同様に実施されます。

国民年金を未納した場合のデメリット

65歳以上で年金を受給するためには、原則10年間の保険料納付済等期間が必要となります。保険料納付済等期間には、以下の3つの期間を通算した期間が反映されます。

  • 国民年金の保険料を納めた期間や、免除された期間
  • サラリーマンの期間(船員保険を含む厚生年金保険や共済組合等の加入期間)
  • 年金制度に加入していなくても資格期間に加えることができる期間(「カラ期間」と呼ばれる合算対象期間)

国民年金を未納のままにしておくと、上記の保険料納付済等期間に影響を与えるだけでなく、最終的に受給できる年金総額にも影響します。詳しくみていきましょう。

国民年金の保険料を納めた期間として反映されない

国民年金の未納(滞納)と免除・納付猶予では、保険料納付済等期間における扱われ方が異なります。

申請を行い保険料の免除・納付猶予が認められた場合、免除された期間は保険料納付済期間として算入され、その期間は所定の倍率に応じて保険料を国が肩代わりしてくれます。

納付猶予の場合には、追納を承認された月の前10年以内の未納分保険料を納めることができるため、所定期間内に追納を行うことで未納分を大きく減らすことができます。

申請を行わず未納のまま放置しておくと、保険料納付済期間として認定されず、納付を行った期間が10年以下である場合には年金の受給資格を満たすことができません。

最終的に受給できる年金総額が減少する

2023年度(令和5年度)の67歳以下の方の国民年金の満額は、年額で795,000円(66,250円×12ヶ月)です。
(参考:日本年金機構「令和5年4月分からの年金額等について」)

満額の年金を受け取るためには480ヶ月(40年)分の保険料を納付する必要があり、仮に未納期間が10年であった場合、将来の年金は満額からどの程度減少するのでしょうか。

未納期間が10年であれば、満額の年金を受け取るために必要な期間の4分の1が未納ということになります。つまり、年金の受給額も満額の4分の1に相当する金額が差し引かれ、年間の受給額が596,250円に減少します。

保険料免除が認められている場合は一部が国に負担されているため、未納の場合と比較して将来の年金総額は増額します。また、納税猶予であっても追納によって未納分を補い将来の年金総額を増額させることができます。

国民としての最低限の義務

国民年金は、国民が将来年金を受け取るための権利を得る納付義務です。20歳以上60歳未満の方が毎月所定の金額を納めることで、原則65歳以上で年金を受給することができます。

近年は、老後の資産形成に向けて、企業型DCやiDeco等の私的個人年金制度の活用が注目されています。それは、少子高齢化の進む日本において、若者の担い手が減っていく社会構造の変化に起因する社会保障制度への不安感の現れでもあります。

公的保障制度が開始された時から時代も変わり、国民年金だけ納めていても老後の資金は十分でないかもしれません。しかし、納付義務がある以上、国民として未納の状態を続けるのは望ましくないと考えられます。

保険料の免除・納付猶予が認められる場合を除き、国民年金の保険料が未納の場合のデメリットを理解し、ご自身の老後の資産形成のために必要な行動を今からしていきましょう。

<執筆者>

三上 諒子(MILIZE提携FPサテライト株式会社所属FP)
大阪市立大学商学部学士課程修了。
学生時代にESG投資の有効性に関する研究を行う。
主にESG・サステナビリティ領域の業務に従事、現在は企業のサステナビリティ・ガバナンス構築に向け活動中。
地球のサステナビリティには最終的に消費者の力が必要と考え、消費者行動に影響を与えるファイナンシャルプランナーを目指す。

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