大手2社による寡占が進む広告業界、ダントツのリーダー的な存在が電通であり、それを追う博報堂DYが3位以降に大差をつけており、2強時代となっています。
オリンピックのロゴ問題で騒いだこの業界は中々世の中全般にその内容は知られていません。
イベント続きの日本で拡大の見込めそうな広告業界。今後の展開は注目の産業だ。
今日は狭き門である広告業界はどのような報酬体系なのかを見ていきたいと思います。
業績が給与にどれだけ反映されているか比較して見てみましょう。
電通と博報堂DYホールディングス、両社の給与比較をするうえで以下のポイントに絞って行いたいと思います。
ポイントは4つ
- 初任給
- 年齢ごとの給与水準
- 生涯給与
- 役員報酬
サラリーマンとして一生をこの会社で過ごし、役員までに到達した場合の報酬の差を見て広告業界の人生の損得勘定を見ていきたいと思います。
それぞれの特徴
【電通】
国内ではダントツのトップの売上を誇る。国内市場の限界を感じ、世界に打って出ている。
2013年に世界8位の英広告会社 イージス ・グループを買収し海外比率が約5割近くになりました。
世界戦略を取りながら大手4社のWPP, オムニコム、 IPG、 ピュブリシス等を必死に追いかけています。
電通は8つの事業領域を持っています
- マーケティング・デザイン
- クライアントのパートナーとして、統合的なマーケティング・ソリューションを提供し、売れ続ける仕組みをデザインします。
- コミュニケーション・デザイン
- 生活者の嗜好や取り巻く状況を把握し、コミュニケーションのプロセスや機会、手段を設計します。
- クリエーティブ
- 「イノベーティブなクリエーティブ」をテーマに、既成概念やデジタル/トラディショナルの枠にとらわれない、最適なソリューションを提案します。
- プロモーション
- 店頭でのコミュニケーションにとどまらず、デジタル領域の知見やツール、スペース・ブランディングの手法を有しています。
- デジタル/ソーシャルメディア
- 電通グループ各社の専門性を活用し、企業の課題解決を支援するデジタル・ソリューションを提供します。
- データ・ソリューション
- 多様なデータを活用し、マーケティングの最適化を支援するためのデータ・ソリューションを開発しています。
- メディア・コンテンツ
- メディア・プランニングのノウハウ、メソッド、優良なコンテンツ資産、そしてそれらを活用したメディア企画を提供します。
- ソーシャル・ソリューション
- ソーシャルテーマを発掘し、その解決に向けたビジネススキーム開発、コミュニケーション戦略などのソリューションを提案します。
電通「鬼十則」(4代目社長吉田秀雄による社訓)
1. 仕事は自ら「創る」べきで、与えられるべきでない。
2. 仕事とは、先手先手と「働き掛け」て行くことで、受け身でやるものではない。
3. 「大きな仕事」と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする。
4. 「難しい仕事」を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。
5. 取り組んだら「放すな」、殺されても放すな、目的完遂までは……。
6. 周囲を「引きずり回せ」、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。
7. 「計画」を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
8. 「自信」を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚味すらがない。
9. 頭は常に「全回転」、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。
10.「摩擦を怖れるな」、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。
【博報堂DYホールディングス】
国内2位、世界で8位の規模を持つ広告会社グループです。
持株会社傘下に博報堂、大広、読売広告社があり、現在海外の体制強化狙いM&Aを推進しています。
博報堂DYグループの特徴の一つに、広告主に向き合う3社と、
メディア、コンテンツホルダーと向き合う博報堂DYメデアパートナーズを中核事業会社とする日本で唯一のユニークな組織構造があります。
博報堂DYグループ、2つの基本的なグループポリシー
- 「生活者発想」
- 博報堂DYグループの発想の原点。
- 人々を単に「消費者」として捉えるのではなく、多様化した社会の中で主体性を持って 生きる「生活者」として捉え、深く洞察することから新しい価値を創造していこうという考え方。
- 「パートナー主義」
- 博報堂DYグループのビジネスの原点
- 常に生活者視点に立ち、広告主 ・ 媒体社のビジネスを共に見つめ、語り合い、 行動することからソリューションを提供していこうという考え方。
博報堂の7つの経営理念
- 顧客に対して、常に最善のサービスを提供し、ビジネス価値の向上に貢献する。
- メディアの革新と向き合い、メディア価値の向上に貢献する。
- 世界的にネットワークを展開し、サービス網の充実をはかる。
- 生活者から発想することで、人々の次世代の豊かさを創造し、社会の発展に寄与する。
- 自由と自律を尊重し、多様な個性とチーム力を価値創造の源泉とする。
- 自立と連携の精神で、新しい挑戦を続け、世界一級のマーケティングサービス企業集団を目指す。
- 企業価値の継続的な向上をはかり、株主からの信頼と期待に応える。
両社の業務区分別売上高と構成比です。
【2014年度業務区分別売上高と構成比】
電通 | 会社名 | 博報堂DYホールディングス | ||
構成比(%) | 売上高(百万円) | 項目 | 売上高(百万円) | 構成比(%) |
7 | 107,916 | 新聞 | 64,759 | 5.7 |
2.2 | 33,643 | 雑誌 | 23,649 | 2.1 |
0.9 | 14,112 | ラジオ | 14,433 | 1.3 |
45 | 690,700 | テレビ | 431,048 | 38.1 |
5.1 | 78,036 | インターネット メディア |
109,662 | 9.7 |
3.4 | 52,550 | アウトド アメディア |
40,044 | 3.5 |
13.1 | 201,801 | クリエイティブ | 114,972 | 10.2 |
12.1 | 186,238 | マーケティング プロモーション |
206,135 | 18.2 |
8.4 | 128,656 | コンテンツ等 | 20,530 | 1.8 |
2.7 | 41,448 | その他 | 105,832 | 9.4 |
100 | 1,535,100 | 合計 | 1,131,064 | 100 |
(電通は単体、博報堂DYホールディングスは連結)
(電通アニュアルレポート2015、博報堂DYホールディングス2015年3月期通期連結決算概要より)
売上高では殆どの区分で電通が上回りますが、
インターネットメディアやマーケティング、プロモーションの区分では博報堂DYホールディングスが上回ります。
構成比ではやはり2社ともテレビが大きいですが、より電通のほうが比率が大きく45%にもなります。
その他ですとインターネットメディアは電通が5.1%に対して博報堂DYホールディングスが9.7%、コンテンツ等が電通の8.4%に対して博報堂DYホールディングスが1.8%と大きな違いが出ています。
業績は?
業績も比べておきましょう。
【2014年度の業績:連結決算】 (単位円)
電通 | 会社 | 博報堂DYホールディングス |
2兆4,192億 | 売上高 | 1兆1,310億 |
2兆3,093億 | 前年 | 1兆959億 |
4.7% | 対前年度比 | 3.2% |
825億 | 経常利益 | 389億 |
458億 | 当期純利益 | 198億 |
1,709億 | 包括利益 | 523億 |
33.4% | 自己資本比率 | 41.6% |
売上高は電通が博報堂DYホールディングスの2.14倍で、1兆2,882億円ほど上回っていてます。
経常利益、当期純利益でも電通が博報堂DYホールディングスを大きく上回っていて、経常利益で2.12倍、当期純利益で2.31倍です。
売上の成長率でも電通が前年対比で4.7%の成長を記録しているのに対し博報堂DYホールディングスは3.2%です。
初任給
これからの就職する方のために初任給制度を掲載しておきます。
【電通】
2016年4月入社社員
- 給与(2014年4月の実績):初任給 240,000円(地域手当<東京>24,000円含む)
- 賞与 年2回(6月・12月)
- 勤務時間
- 9:30~17:30 (一部フレックス制実施)
- 休日休暇:完全週休 2日制
【博報堂DYホールディングス】
2016年4月入社社員
- 初任給:2014年度実績 年俸制3,420,000円+超過勤務手当+業績賞与
- 賞与 : 年1回
- 勤務時間
- 9:30~17:30
- 休日
- 完全週休2日制(土曜日・日曜日)
- 祝日
- 年末年始(12月29日~1月3日)
- 休暇
- 年次有給休暇/勤務年数に応じ15日~25日(ただし初年度は12日)
- フリーバカンス/年2回、連続5日間の休暇制度
- 福利厚生
- 制度
- 各種社会保険
- 企業年金
- 育児・介護休暇制度など
- 施設
- 軽井沢クラブ
- 保養所
- 診療所
- その他各地に契約施設
- 制度
博報堂DYホールディングスが年俸制のため比較がしにくいですが、
基本給を全て月給でもらうと仮定して12で割ると285,000円、月給+4ヶ月分のボーナスでもらうと仮定して16で割ると21,3750円です。
年俸制はかなり珍しいですね。
年齢ごとの給与
有価証券報告書の情報から取得できる情報は以下のようになっています。
【2015年度3月決算の比較(単体)】
従業員数 (グループ連結時) |
平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与(千円) | |
電通 | 7,348(43,583) | 39.5 | 13.9 | 12,719 |
博報堂DYホールディングス | 189(13,021) | 42.8 | 15.4 | 10,365 |
平均年齢は3.3歳、平均勤続年数は1.5年博報堂DYホールディングスの方が電通より長いです。
平均年間給与は電通が博報堂DYホールディングスより235.4万円ほど多くなっています。
【年代別推定年収 単位千円】
年齢 | 電通 | 博報堂DYホールディングス | 差額 |
25 | 8,011 | 6,141 | 1,870 |
30 | 10,011 | 7,674 | 2,337 |
35 | 11,461 | 8,785 | 2,676 |
40 | 12,857 | 9,855 | 3,002 |
45 | 13,806 | 10,583 | 3,223 |
50 | 14,750 | 11,307 | 3,443 |
(両者とも平均年間給与は、賞与及び超過勤務手当を含みます。)
こちらからほかの企業も検索⇒企業シムラ―検索
全年齢層で電通がかなり上回っています。
25歳時でおよそ187万円の差があり、ピーク時の50歳時ではおよそ344.3万円の差があります。
これらの年収は有価証券報告書から平均年齢、平均年収等を取得し計算をしております。
給与カーブの形状等は統計局の産業別のカーブ構造を反映させております。
2つとも同じ業種のためカーブの上昇率等は共通の数字を使っています。
生涯給与
この年収で生涯もらえる給与を計算します。生涯給与といってサラリーマンとしての収入の総額です。副業等一切なくこの会社からのみの収入です。
会社名 | 生涯給与 |
電通 | 4億8,290万円 |
博報堂DYホールディングス | 3億7,016万円 |
電通が博報堂DYホールディングスを1億1,274万円ほど上回っています。
生涯給与で1億円以上の差ができているのは非常に驚きです。
企業の収益性の高さは確実に従業員の給与にも反映されていることが確認されました。
役員報酬
取締役の報酬を見て、社内で成功して偉くなった場合にどれだけの報酬がもらえるのかをイメージしてください。
業績を反映して、役員報酬でも大きな差が生じているようです。
会社名 | 役員数 | 役員報酬(百万円) | 役員賞与(百万円) | オプション(百万円) | 退職金(百万円) | 1人あたり総報酬(百万円) |
電通 | 11 | 380 | 310 | 0 | 0 | 62.7 |
博報堂DYホールディングス | 7 | 197 | 57 | 0 | 51 | 43.6 |
電通が博報堂DYホールディングスよりも1人当たりの報酬額(年額)では1,910万円多いです。
生涯で形成する資産
生涯で形成される資産はいくらになっているかを計算してみました。
両者とも平均的な支出を一生続けたとしてどれくらいの資産が65歳、85歳のときに残っているかを推計します。
電通、博報堂DYホールディングスの現在30歳の方を例に計算を行います。
結果はシミュライザー(人生計画システム)で計算すると以下のようになりました。
電通 | 博報堂DYホールディングス | 差額(電通基準) | |
65歳 | 12,306万円 | 9,015万円 | 3,291万円 |
85歳 | 6,923万円 | 5,452万円 | 1,471万円 |
65歳時に電通が3,291万円(貯蓄可能額が)上回ります。
電通の1億2,306万円は軽く1億円を超えており、多くの上場企業の中でもトップクラスの資産額となります。
これが85歳時では1,471万円に縮まります。
(これは退職後の年金収入差は大きくありませんが、両者の支出は退職前の収入を基準にしていて、その比率が変わっていないため、
電通の収支が博報堂DYホールディングスの収支よりもこの期間は悪くなっているためです。
しかし両者とも安定的な老後が約束されているようです。
(当システムでは85歳でプラスになっていることを一つの目標にしています。)
しかし使いすぎや、病気、運用の失敗(シミュレーションでは預金しかつかっていません。)で大きく異なることになります。
左が電通の方、右が博報堂DYホールディングスの方です。30歳には五郎と名前がついています。(全企業共通ルール)
システムへ移動してほかの企業も見てみる。⇒ 企業シムラ―検索
結論
電通が生涯年収(従業員として)は博報堂DYホールディングスのそれに比べ1億1,274万円ほど多くなっています。
役員になってからの待遇も、年平均で1,910万円ほど電通が上回りました。
最後に65歳以降の資産額で比較すると電通が65歳時に3,291万円、85歳時に1,471万円多いです。
業績の差が給与の差に反映される結果となりました。
そのため今回は電通の勝ちとします。
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