ANAホールディングス株式会社(以下ANA)とスカイマーク株式会社(以下スカイマーク)、は共に航空会社ですがスカイマークはANAの支援を受けて民事再生手続きを終えて、新生スカイマークとして再出発しているという経緯があります。
支援をした会社とされた会社、待遇面でどう違うのか比較してみました。
ANAとスカイマーク、両社の給与比較をするうえで以下のポイントに絞って行いたいと思います。
ポイントは4つ
- 初任給
- 年齢ごとの給与水準
- 生涯給与
- 役員報酬
サラリーマンとして一生をこの会社で過ごし、役員までに到達した場合の報酬の差を見て航空業界の人生の損得勘定を見ていきたいと思います。
それぞれの特徴
【ANAホールディングス株式会社】
ANAホールディングス株式会社は1952年創業の日本の民間航空会社です。
現在はスターアライアンスグループに所属しています。
LCCのバニラ・エアを持っているほか、スカイマークの再建に関与していました。
このスカイマークの再建に関与してか世界最大の旅客機である総2階建てのエアバス社のA380を導入することが決まっています。
貨物事業では沖縄県に通関や検疫も行える24時間体制の「沖縄貨物ハブ」を作りヤマト運輸と連携し日本の地方からアジア諸国への貨物輸送時間の大幅な短縮を実現しています。
今まで3日かかっていたのが翌日の昼過ぎに届くほどです。そのため新鮮な魚介類などを送ることが出来るようになっています。
国際線では平成27年度の国際線旅客数および有償旅客キロで日本航空を上回りました。これは昭和61年の定期便参入から30年で初めてのことです。また拡大が決まった羽田空港の米国向け発着枠についても日本航空の昼2便獲得したのに対しANAは昼3便深夜早朝1便の合計4便獲得し、更に有利に成りました
【スカイマーク株式会社】
スカイマーク株式会社は1996年に当時のH.I.S.の社長、澤田秀雄氏らの出資によって設立。
1997年の航空法改正による航空運賃の設定が一部自由化されたのを受けて格安運賃を看板に新規参入しました。
定期便の新規参入は35年ぶりのことです。
その後LCCが増え競争が激化しています。
エアバス社のA380を導入しようとしたところから始まるトラブルにより経営が行き詰まり、2015年1月に民事再生法をの適用を申請。ANAの支援のもと2016年3月末に民事再生手続を終えました。
そして新生スカイマークとして4月末からプロ野球球団「阪神タイガース」のロゴを機体側面にデザインした特別デザイン機「タイガースジェット」を運航しています。
業績は?
業績も比べておきましょう。
【2014年度の業績:連結決算】 (単位円)
ANA | 会社 | スカイマーク |
1兆7,134億5,700万 | 売上高 | 809億円4,600万 |
1兆5,701億4,500万 | 前年 | 859億7,500万 |
9.1% | 対前年度比 | -5.9% |
671億2,900万 | 経常利益 | ▲166億8,500万 |
392億3,900万 | 当期純利益 | ▲202億1,800万 |
34.7% | 自己資本比率 | 34.1% |
(両社の有価証券報告書より。シミュライズ調べ)
売上高はANAがスカイマークの21倍で、1兆6,300億円ほど上回っていてます。
経常利益で830億円ほど、当期純利益で600億円ほどANAがスカイマークを上回っています。
売上の成長率ではANAが9.1%なのに対してスカイマークはマイナス5.9%でマイナス成長です。
初任給
これからの就職する方のために初任給制度を掲載しておきます。
【2017年4月入社社員初任給(単位:円)】
ANA
|
学歴
|
スカイマーク
|
記載なし
|
修士了
|
254,650(東京地区) 240,680(その他地区) |
212,000
|
大学卒
|
246,950(東京地区) 233,860(その他地区) |
(ANAは総合職事務職、総合職技術職。スカイマークは事務系、技術系。)
ANAは修士了の初任給の記載はありません。大学卒で比較するとスカイマークが上回り21,860円〜34,950円の差があります。
初任給の差としては小さくありません。
あくまで初任給であり、これとは別に諸手当がつきます。
年齢ごとの給与
有価証券報告書の情報から取得できる情報は以下のようになっています。
【2014年度決算の比較(単体)】
従業員数 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与(千円) | |
ANA
|
161 | 47.1 | 1.58 | 7,896 |
スカイマーク
|
2,216 | 34.3 | 3.8 | 5,106 |
(両社の有価証券報告書より。シミュライズ調べ)
従業員数はスカイマークがANAより2,000人以上多いです。
これはANAがホールディングスのみだからで連結すると34,919人でスカイマークより32,000人以上多いです。
平均年齢はANAが12.8歳高いです。
平均勤続年数はスカイマークが2.22年長いですが、これはANAホールディングスが出来てからの平均勤続年数のためです。
平均年間給与はANAがスカイマークより279万円ほど高いです。
かなり大きな差ですが、これは平均年齢が13歳近く離れていることも要因の一つです。
【年代別推定年収 単位千円】
年齢 | ANA | スカイマーク | 差額 |
25 | 5,700 | 4,183 | 1,517 |
30 | 6,405 | 4,700 | 1,705 |
35 | 7,065 | 5,184 | 1,881 |
40 | 7,469 | 5,480 | 1,988 |
45 | 7,742 | 5,681 | 2,061 |
50 | 8,129 | 5,965 | 2,164 |
(両者とも平均年間給与は、賞与及び超過勤務手当を含みます。)
こちらからほかの企業も検索⇒企業シムラ―検索
全年齢層でANAがスカイマークを上回っています。
25歳時でおよそ151.7万円の差があり、ピーク時の50歳時では216.4万円の差があります。
ANAが大きく上回っています。
初任給ではスカイマークが上回っていましたが、この差額を見ると賞与や手当などを上積みするとANAの方が上回っているのかもしれません。
これらの年収は有価証券報告書から平均年齢、平均年収等を取得し計算をしております。
給与カーブの形状等は統計局の産業別のカーブ構造を反映させております。
2つとも同じ業種のためカーブの上昇率等は共通の数字を使っています。
生涯給与
この年収で生涯もらえる給与を計算します。生涯給与といってサラリーマンとしての収入の総額です。副業等一切なくこの会社からのみの収入です。
会社名 | 生涯給与 |
ANA | 2億7,401万円 |
スカイマーク | 1億8,977万円 |
ANAがスカイマークを8,424万円ほど上回っています。
かなり大きな差ができました。分譲マンション1部屋を十分狙える金額です。
役員報酬
取締役の報酬を見て、社内で成功して偉くなった場合にどれだけの報酬がもらえるのかをイメージしてください。
会社名 | 役員数 | 役員報酬(百万円) | 役員賞与(百万円) | オプション(百万円) | 退職金(百 万円) |
1人あたり総報酬(百万円) |
ANA | 6 | 295 | 49 | 0 | 0 | 57.3 |
スカイマーク | 7 | 118 | 0 | 0 | 0 | 16.9 |
ANAがスカイマークを4,040万円ほど上回ります。
生涯で形成する資産
生涯で形成される資産はいくらになっているかを計算してみました。
両者とも平均的な支出を一生続けたとしてどれくらいの資産が65歳、85歳のときに残っているかを推計します。
ANA、スカイマークの現在30歳の方を例に計算を行います。
結果はシミュライザー(人生計画システム)で計算すると以下のようになりました。
ANA | スカイマーク | 差額 | |
65歳 | 4,714万円 | 5,517万円 | 803万円 |
85歳 | 2,970万円 | 6,206万円 | 3,236万円 |
65歳時にスカイマークが803万円(貯蓄可能額が)上回ります。
これが85歳時では3,236万円と広がります。
ANAの方が収入が高かったためその分支出も大きくなり、収入が大きく減った老後の支出もスカイマークに比べて多くなります。
そのためスカイマークの方が老後の資産が多く、ANAとの差は65歳時に比べると85歳は大きくなります。
しかし両者とも安定的な老後が約束されているようです。
(当システムでは85歳でプラスになっていることを一つの目標にしています。)
しかし使いすぎや、病気、運用の失敗(シミュレーションでは預金しかつかっていません。)で大きく異なることになります。
左がANAの方、右がスカイマーク(日本航空)の方です。30歳には五郎と名前
がついています。(全企業共通ルール)
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結論
初任給ではスカイマークがANAを2万円から3.5万円上回ります。
しかし全年齢層、平均給与、生涯年収、役員報酬全てでANAがスカイマークより高いです。
生涯年収(従業員として)は8,424万円、役員になってからの待遇は4,040万円ANAがスカイマークより多いです。
最後に65歳以降の資産額で比較するとスカイマークが65歳時に803万円、85歳時に3,236万円多いです。
今回の比較で差が大きく出ました。初任給こそスカイマークが上回っていますが、全年齢層での収入、生涯年収、役員報酬全てでANAが上回っています。しかし老後の資産に関してはスカイマークが65歳時も85歳時も上回り、差額は広がりました。
これはANAの方が支出が多い、つまりより良い生活をしているためです。
その結果老後の資産が無くなっては意味がありませんが85歳時でも3,000万近くの資産が残っていて老後を過ごすには十分以上の金額です。
そのため今回はANAの勝ちとします。
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