上場企業の2014年3月末の決算情報を用いた、主要業種の生涯給与ランキング・アップデート。今回は、アベノミクスによる公共工事の増加や、東京五輪開催に向けた受注増などで追い風の吹く一方で、建設資材や人件費高騰によるコストアップの影響も見えはじめている建設業界です。
ここでは、上位15社の生涯給与ランキング、各社業績情報のアップデート、更に、財務データからみえる将来の給与動向を展望してみたいと思います。
2014生涯給与ランキング — 建設業界 (上位15社)
順位 | 銘柄 コード |
会社名 | 生涯給与 (億円) |
前年変化 | 40歳給与 (万円) |
平均 年齢 |
平均給与 (万円) |
1 | 1963 | 日揮 | 3.39 | 1.0% | 942 | 43.2 | 983 |
2 | 1878 | 大東建託 | 3.35 | 1.5% | 933 | 41.5 | 960 |
3 | 6366 | 千代田化工建設 | 3.28 | 2.1% | 914 | 41.7 | 944 |
4 | 1979 | 大気社 | 3.23 | 4.8% | 899 | 43.0 | 937 |
5 | 1802 | 大林組 | 3.07 | 0.5% | 855 | 42.5 | 890 |
6 | 1881 | NIPPO | 3.06 | 3.7% | 853 | 45.0 | 895 |
7 | 6330 | 東洋エンジニアリング | 3.05 | 0.3% | 848 | 44.2 | 888 |
8 | 1925 | 大和ハウス工業 | 3.03 | 1.9% | 844 | 38.2 | 816 |
9 | 1801 | 大成建設 | 3.03 | 0.9% | 843 | 42.8 | 878 |
10 | 1812 | 鹿島建設 | 3.02 | 0.3% | 840 | 43.5 | 877 |
11 | 1803 | 清水建設 | 3.00 | 2.0% | 836 | 43.6 | 873 |
12 | 1911 | 住友林業 | 2.94 | 1.8% | 818 | 41.2 | 837 |
13 | 1883 | 前田道路 | 2.84 | -5.8% | 789 | 39.7 | 785 |
14 | 1722 | ミサワホーム | 2.83 | 4.0% | 788 | 44.8 | 826 |
15 | 1983 | 東芝プラントシステム | 2.83 | 1.2% | 787 | 44.2 | 824 |
(注1) 生涯給与、40歳給与は、各社の有価証券届出書データを用い、シミュライズ給与カーブモデルによる推計値
(注2) 平均年齢、平均年収は企業による公表値
(注3) 前年変化は、生涯給与の前年度推計値からの変化
(注4) 業種の分類は東証分類によるものの一部弊社独自の分類を加味。なお、平均給与を公表していない企業、従業員数が少ない企業等を除く
ランキング上位5社は、いずれも前年から生涯給与1%~5%程度伸ばし、前年と順位は変わらず。トップは、石油精製プラント、石油化学・化学、天然ガスプラントなどに豊富な実績を持つ総合エンジニアリング会社の 日揮(株)、2位は個人のアパート経営等の賃貸経営受託で賃貸住宅の供給を伸ばす建設会社の 大東建託(株)、3位はエンジニアリング会社の千代田化工建設(株)です。
建設業というと直ぐに思い浮かぶ大手ゼネコンは、5位に(株)大林組、9~11位に大成建設(株)、鹿島建設(株)、清水建設(株)、とそれほどランキング上位に入ってこないのが興味深いところです。いずれの会社も生涯給与は1~2%アップと収益の伸びの割には上昇幅は控えめです。
目立ったのが、順位は前年同様4位と変わらないものの、減収減益にもかからわず生涯給与を1500万円程伸ばした(株)大気社。同社は空調設備・工事、クリーンルーム、塗装設備等の大手です。また、6位には生涯給与を1000万円伸ばし前年11位からアップの(株)NIPPO が入っています。同社はアスファルト舗装などの大手企業です。
ランキング各社の業績まとめ (連結ベース)
銘柄 コード |
会社名 | 売上高 (億円) |
前年 変化 |
経常利益 (億円) |
前年 変化 |
ROE |
1963 | 日揮 | 6,758 | 8.2% | 837 | 15.4% | 12.6% |
1878 | 大東建託 | 12,597 | 9.3% | 933 | 9.1% | 24.6% |
6366 | 千代田化工建設 | 4,461 | 11.8% | 228 | -10.5% | 6.8% |
1979 | 大気社 | 1,854 | -14.2% | 93 | -13.4% | 5.1% |
1802 | 大林組 | 16,128 | 11.4% | 401 | -10.2% | 5.2% |
1881 | NIPPO | 4,316 | 12.1% | 360 | 50.9% | 9.9% |
6330 | 東洋エンジニアリング | 2,301 | 0.6% | 49 | 22.6% | 1.3% |
1925 | 大和ハウス工業 | 27,003 | 34.5% | 1,764 | 21.3% | 10.8% |
1801 | 大成建設 | 15,335 | 8.3% | 568 | 61.9% | 8.4% |
1812 | 鹿島建設 | 15,212 | 2.4% | 270 | 9.6% | 5.6% |
1803 | 清水建設 | 14,976 | 5.8% | 293 | 68.9% | 3.8% |
1911 | 住友林業 | 9,730 | 15.1% | 336 | 24.4% | 10.3% |
1883 | 前田道路 | 2,301 | 7.9% | 208 | 16.6% | 8.4% |
1722 | ミサワホーム | 4,260 | 7.9% | 127 | 5.6% | 29.5% |
1983 | 東芝プラントシステム | 1,823 | 5.4% | 167 | 1.5% | 9.4% |
(注1) 連結ベース。有価証券報告書等を基にシミュライズ作成
続いて、企業の直近年度の財務情報を用いて今後の給与動向を探れるよう、いくつかの財務データを見ていきたいと思います。ここで取り上げる指標は以下になります。
① 配当性向 | 当期純利益に対して配当金支払額の占める割合。 利益をどれだけ株主に配当しているかを示す |
② ROE | 当期純利益を純資産合計で割った指数。投下資本に対して企業の稼ぐ力を示す総合的な指数といえる |
③ 経常利益(従業員一人当たり) | 経常利益を従業員数で割った数値 |
④ 純資産額(従業員一人当たり) | 純資産額を従業員数で割った数値 |
⑤ 現金等(従業員一人当たり) | 現預金(同等物も含む)を従業員数で割った数値 |
ランキング各社の配当性向・ROE・従業員一人当り財務データまとめ (平均給与公表企業単独決算ベース)
銘柄 コード |
会社名 | 配当性向 | ROE | 経常利益 (一人当たり) |
純資産額 (一人当たり) |
現金等 (一人当たり) |
1963 | 日揮 | 27.2% | 14.1% | 32.4 | 143.6 | 114.0 |
1878 | 大東建託 | 82.4% | 24.8% | 5.8 | 13.8 | 22.6 |
6366 | 千代田化工建設 | 31.0% | 8.0% | 12.1 | 104.3 | 6.8 |
1979 | 大気社 | 65.5% | 3.8% | 3.1 | 44.2 | 9.6 |
1802 | 大林組 | 75.1% | 2.2% | 1.4 | 42.1 | 5.8 |
1881 | NIPPO | 15.5% | 10.1% | 17.6 | 112.4 | 14.5 |
6330 | 東洋エンジニアリング | 0.0% | 0.0% | 8.3 | 65.9 | 47.8 |
1925 | 大和ハウス工業 | 39.2% | 11.3% | 9.3 | 60.3 | 5.0 |
1801 | 大成建設 | 31.6% | 6.8% | 4.5 | 41.5 | 37.7 |
1812 | 鹿島建設 | 103.5% | 2.0% | 1.3 | 33.2 | 22.1 |
1803 | 清水建設 | 82.0% | 2.2% | 1.5 | 29.2 | 8.5 |
1911 | 住友林業 | 20.9% | 9.0% | 6.0 | 41.3 | 14.4 |
1883 | 前田道路 | 20.9% | 8.6% | 9.4 | 68.8 | 8.5 |
1722 | ミサワホーム | 15.0% | 21.6% | 10.0 | 40.7 | 19.6 |
1983 | 東芝プラントシステム | 13.6% | 10.8% | 5.4 | 33.2 | 0.3 |
(注)金額は百万円
ROEは企業の投下資本に対する総合的な稼ぐ力、 配当性向は企業の株主への利益還元姿勢を示します。 ROEが一定水準以上あり配当性向の高い企業は、今後も資本効率よく収益を稼ぎながら従業員への還元も続けて行く可能性が相対的に高いと考えられます。 上記表より、ROEが一定水準あり、配当性向が相応に高い企業として、日揮(株)、大東建託(株)、(株)NIPPO、大和ハウス工業(株)、ミサワホーム(株)あたりが挙げられます。
これらの企業のうち、日揮(株)、大東建託(株)、(株)NIPPO、ミサワホーム(株)は、従業員一人当たりでみた経常利益や純資産額が業界内の平均水準より高く比較的効率的な経営を続けていると想定され、同時に、従業員一人当たりの現金額も相対的に多いことから、今後の給与伸びの余地が他社対比あるのではないかと考えられます。
シミュライズでは引続き、企業の給与動向を見ていきたいと思います。
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