映画公開中のビリギャル、原作は坪田信貴『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(坪田信貴著、KADOKAWA刊)。素晴らしい話だ。
信頼できる人や仲間との出会いで人間は変われる。前向きな努力は必ず報われる、どんな環境にいてもだれにでもチャンスは来るという教訓だ。
しかし、どうしても気になってしまうのが、彼女がもしそんな努力をしないで、(あるいは努力するきっかけが得られなくて)そのまま大学に行かずにフリーターになった場合とどれだけお金について差ができるのだろう?という疑問だ。
よきチャンスに恵まれない、あるいはお金がない等の理由で慶応に行くことができない人はたくさんいるのではないか?
親の熱意と投資(お金)と子供の努力がうまくかみ合って、はじめて実現される夢は多いと思いす。どれが欠けてもうまくいかない。
親の思いやり、熱意について論じたいところですが、ここではお金についてのみ考えます。どのような費用がかかって、その結果娘の人生がどのように金銭的に恵まれるかを見てみましょう!(投資とリターンを考えます。)
今回ここでは以下の2人を比較してみることにします。
- うまく慶応にいけた今回の主人公を「ビリギャル」
- きっかけもなくギャルからフリーターになったひとを「だめギャル」
と呼んで区別していきます。
高校生までの費用はビリギャルもだめギャルでも一緒なので考えないとして、
- いま高校2年生の子供にこれから先どれだけ親は費用がかかるのか (子供への 投資)
- その結果卒業後の娘の収入や暮らしがどう変わり、一生でどれだけ資産の差ができるか考えてみた。(リターン)
如何に教育費(子供への投資)やそれを使って子供により多くの機会を与えることが大切かを考えてみましょう。まずビリギャルですが以下のような費用が大学卒業までにかかります。
子供への投資額(教育費)
さあ子供への投資の額、教育費を見ていきましょう。(高校2年生から)
ビリギャル | だめギャル | |
塾費用 | 200万円 | 0円 |
受験費用 | 25万円 | 0円 |
大学学費 | 720万円 | 0円 |
大学の生活費(下宿) | 548.5万円 | |
合計 | 1493.5万円 | 0円 |
2人の親の投資額(教育費)の差は1493.5万円になります。
ビリギャルの方が親の負担は多く、これを将来両親に返すと仮定しましょう。これは将来親孝行をして返してもらうと仮定します。
費用の詳細は以下のようになります。
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ビリギャルにかかるお金の話
この彼女を成功に導いたのは、もちろん塾の講師との出会いであるが、やはりこれはただではない。親の彼女への塾への投資額はいくらであったか? 本人のインタービューや開示されている塾の費用等で高校2年から3年の2年間でおそらく200万円程度と思われます。
このお金を作るのに母は定期預金や生命保険を解約し、数少ない貴金属類も売って授業料をかき集めたといわれています。高校の授業料とは別にこれだけの投資をするのはかなり大変です。
塾に行かせる費用 200万円
- 受験費用
受験費用等を考えないとすると、受験代で入学検定料 35,000円で
交通費・宿泊費等で遠方の大学を受験する場合には、さらに費用がかかります。どれくらいか統計を見ると以下のようになっています。
【大学受験に要した費用】
受験料・交通費・宿泊費等の平均総額です。
- 自宅通学……20万6600円
- 自宅外通学…23万700円
- 文科系………21万8100円
- 理工系………19万600円
- 医科歯科系…35万4500円
- その他………12万7300円
(2012年度/東京私大教連調べ)
ここでは21万8千円としましょう。
受験関連費用 25万3000円
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慶応大学学費
慶応大学は名門私立大学の中では意外とリーズナブルな方ではあるが、当然公立ほど安くはないですね。
大学4年の学費だけで見ると、以下のようなものがかかります。
【大学4年間の費用】
学年 | 授業料 | 諸経費 | 合計 | 合計 |
大学1年生 | 980,000 | 341,350 | 1,521,350 | 5,485,000 |
大学2年生 | 980,000 | 341,350 | 1,321,350 | |
大学3年生 | 980,000 | 341,350 | 1,321,350 | |
大学4年生 | 980,000 | 341,350 | 1,321,350 |
内訳は以下のようになっています。
分類 | 項目 | 金額 |
学費 | 入学金 | 200,000 |
在籍基本料 | 60,000 | |
授業料 | 980,000 | |
施設設備費 | 270,000 | |
実験実習費 | 0 | |
その他の費用 | - | 11,350 |
初年度納付金合計 | - | 1,521,350 |
在学生納付金合計 | - | 1,321,250 |
4年間の学費 548万5,000円
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慶応大学生活の仕送り
学生生活は学費と同様に大きな負担だ。自宅から通学であればいいのだが、下宿だとかなりコストが高い。
下図【1か月の生活費】(下宿生)の収入が122,170円なので、アルバイトもさせず、勉学に打ち込んでもらうとすると、15万円くら いの援助が必要である。
これを 年間にすると180万円程度の仕送りが必要になります。
【1か月の生活費】(下宿生)(出典:第50回学生生活実態調査
大学生活費用 180万円(年間)なので、
4年間の生活費 720万円
さてビリギャルの将来についてみてみよう!
その結果娘の収入
その結果を見てみましょう。 2人が社会に出てから、どのような収入を上げていったかを検証します。
- 「ビリギャル」は慶応大学を無事に卒業し、ウェディングプランニングの道へ、会社に就職した後独立、自分流のウェディングをプロデュースしている。現
在の年収(330万円と仮定)はそれほど高くはないものの、将来を確実に切り開い
ていけています。今後は独立のリスクはあるものの、1%ずつの年収増加を仮 定して計算してみます。 - 「だめギャル」はフリーターで地元の企業にアルバイトで事務補助を始めて、まだ見習いなので年収は120万
円。こちらも技術を見につけるにつれて徐々に年収は増えていくとする。年率で1%ずつアップを仮定する。
【配偶者】
2人は将来結婚で未来を変えることも可能でしょう。より広い世界を知ったビリギャルの方が将来性の高い男性と結婚する可能性は高いといえるかもしれません。
しかしどちらが年収の高い男性と結婚するかどうかは現時点ではわかりませんので、ここでは差がないと仮定し、2人は同時期に結婚し、同じ年収の将来性も似た人物と結婚すると仮定します。
【支出】
また当然収入が上昇すると支出はそれに比例して増加するのですが、今回は比較のためにまったく現在の支出は変わらずに、同じ金額とし、毎年同じ割合(1%)で増加するとします。
そこで2人のシミュレーション結果の差異を見てみると、
65歳時の夫婦の資産額 | 85歳時の夫婦の資産額 | |
ビリギャル | 1億7,079万円 | 1億8,411万円 |
だめギャル | 2,653万円 | 361万円 |
差額 | 1億4,426万円 | 1億8,050万円 |
2人の差はなんと60歳の資産額で1億4千 万円以上の金額に
なることがわかります。 親が約1,493.5万円の教育費を負担したおかげでこんなにも娘の収入や資産額に差がつくということがわかりました。
教育費の重要性、またより広い世界に出ることで受けるメリットの大きさのようなものが確認できたかと思います。
親に出してもらったこの1493.5万円を20年後に返済するとします。年1%(複 利)の利子を付けて返済すると仮定して計算すると、1,822万円になります。この金額を46歳で親にプレゼントすることにしても、2人の差は割合から言うとさほど変わりません。
【2人のシミュレーション結果】
シミュライズにご登録いただいた方はシムラ―名 「小坂 郁美」で検索をしてみてください。子の名前をコピーして検索メニューの気になる人検索で
下記の画面から検索してください。小坂さんとフリーター小坂さんが登録されています。
クリックして拡大します。
登録していない方は簡単登録へ⇒ シミュライズ登録
こんな比較画面を作成することができます。
最後にビリギャルの気を付けないといけない点やリスクについてまとめておきます。油断するとすぐにだめギャルに追い付かれてしまいます。
【ビリギャルのリスクや注意点】
- キャリアのステップアップへの努力、自己投資を怠らないこと。
- 結婚してより安定した収入を2人で確実に稼ぐこと。
- 収入が増えると支出当然増加する傾向があるので、それをしっかりと管理し抑えること。
- 今回の運用では貯金が1%で増えると仮定しているが、インフレに備えてNISAや確定拠出型年金等でしっかりと将来に向けて運用して貯蓄を増やすこと。
- 突然の事故や病気、イベントに備え、保険にしっかりと入ること。
これらを守っていけばより豊かな安定した生活が可能になります。そしてその余裕が将来の子供への教育費として回すことができ、子供により多くの投資ができるようになり、さらに家族や子孫はお金持ちになるということへ繋がっています。
ビリギャルも塾の講師も偉いけど、実は一番凄いのは母親の子供へのおもいやりだったのかもしれません。