人生の三大支出の一つといわれているマイホーム。大きな金額の買い物ではありますが、住宅ローンを利用することで購入しやすくなります。比較的自己資金が少ない20代の方にとっては助かりますよね。しかし、住宅ローンを組む際に「頭金」を用意するかどうか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
今回は20代の方が住宅ローンを組む際に、頭金を用意する場合と、頭金を用意せずにフルローンを組む場合について、それぞれの特徴を比較しながら解説していきます。
20代の住宅ローンの特徴
20代の方がマイホーム購入を検討するなら、まずは住宅ローンの特徴をしっかりと把握しておきましょう。
20代で住宅ローンを組むということは、他の世代より早めにローンを始められるということなので主に2つのメリットがあります。
1点目は「長期でローンが組みやすい」ことです。
ローンにはさまざまな組み方がありますが、基本的には返済期間を長くすることで毎月の返済額を抑えることができます。ただし、その分、合計の利息額が増えてしまうことに注意しましょう。
2点目は「定年前に完済しやすい」ことです。
ローンを早めに始めた分早めに終わらせることで、定年前に完済できる可能性があります。そのため完済後から定年までの収入を、老後資金や生活費などにまわすことができるでしょう。
なお、定年後も何らかの形で収入を得てローンを支払う方法もあるため、無理に定年までに完済する必要はありません。
一方で20代特有のデメリットもあります。
20代で年収が高くない状態ですと、金融機関からの借入額が低かったり、予算面から購入可能な物件が限られてしまう場合が考えられます。また、20代は比較的、転勤や転職などが多いため、住宅購入後に住む場所を変えないといけなくなる場合もあります。
このような特徴を踏まえたうえで実際に住宅ローンを組む場合、「頭金」をどれくらい準備すれば良いでしょうか?
頭金は一般的に「物件価格に対して1割〜2割」程度が目安といわれています。もし物件価格3,500万円であれば、頭金の目安は350万円〜700万円です。
もし頭金の準備が難しい場合は、頭金を0円にしてフルローンにする方法もあります。
ここからは、頭金を支払う場合とフルローンにする場合、それぞれのメリット・デメリットを確認していきましょう。
頭金を支払うメリット・デメリット
まず、頭金を支払うメリットとデメリットをみていきましょう。
<メリット>
- 支払う利息が減る
- 審査が通りやすくなる
<デメリット>
- 手元の自己資金が少なくなる
それぞれを詳しく解説していきます。
メリット①:支払う利息が減る
金融機関が提供している住宅ローンの中には、頭金を一定額支払うことで金利が下がるものがあります。このような住宅ローンに申し込むことで、返済する利息を減らすことができます。
例えば、全期間固定金利型の「フラット35」がその一例です。フラット35は全国300以上の金融機関が住宅金融支援機構と提携して扱っている住宅ローンで、一定条件を満たし1割以上頭金を支払うことで金利が下がります。
また、頭金を支払うことで借入額が少なくなり、その分の利息を支払う必要がなくなります。
メリット②:審査が通りやすくなる
住宅ローンは勤続年数や健康状態、過去の金融事故などさまざまな理由で審査が通らないケースがあります。頭金を多めに支払うことで、貸す側の銀行が「資金があり計画性がある」と判断し審査が通りやすくなります。ただし、頭金を多く支払うと必ず審査が通るわけではありません。
デメリット:手元の自己資金が少なくなる
マイホーム購入前に頭金を支払ったとしても、必要なお金はそれ以外にもあります。
主に「住宅ローン諸費用」「引っ越し費用」「生活防衛費」が必要であることを覚えておきましょう。頭金ばかりに注目していると、こういったほかの費用にお金を回せなくなる可能性があります。
具体的にそれぞれどのような費用なのか確認しておきましょう。
- 住宅ローン諸費用
住宅ローン諸費用とは、住宅ローンを組む際の手数料や税金のことを意味します。住宅ローン諸費用には、銀行に払う融資手数料や不動産会社への仲介手数料、そのほかローン保証料、火災保険や団体信用生命保険などの各種保険料、不動産登記にかかわる登録免許税などがあります。
諸費用の額は新築物件か中古物件かによって異なりますが、一般的に物件価格の5〜10%程度が目安といわれています。例えば、物件価格が3,500万円の場合、175万円〜350万円程度が必要となります。
住宅ローン諸費用も、頭金と同様に諸費用ローンを組む方法もありますが、その分利息も発生することに注意しておきましょう。
- 引っ越し費用
引っ越し時期や人数、距離などにより金額は異なりますが、3人世帯が同一県内(50km未満)に引っ越した場合、繁忙期であれば平均相場は11万円程度、通常期であれば8万円程度といわれています。
また、引っ越し先に備える家電や家具を新調する場合は、その費用もさらに必要です。
- 生活防衛費
生活防衛費とは、病気やケガなど万が一のときに備えておくお金のことを指します。
例えばなんらかのトラブルによって働けなくなり、今までのように給与がもらえない状況が考えられます。そのようなときに準備してきた生活防衛費を使います。生活費の3ヶ月~半年分ほどを目安として用意しておくと安心でしょう。
フルローンのメリット・デメリット
次に、頭金を0円にして物件価格のすべてを住宅ローンで組む、フルローンのメリットとデメリットをみていきましょう。
<メリット>
- 住宅ローン減税で控除される額が増える
- 貯蓄を生活費として残しておける
<デメリット>
- ローンの総返済総額が多くなる
こちらもそれぞれを詳しく解説していきます。
メリット①:住宅ローン減税で控除される額が増える
「住宅ローン減税」と呼ばれる、住宅ローンを組んだ場合に住宅取得者の金利負担の軽減を図る制度があることをご存じでしょうか。「年末時点での住宅ローン残高×0.7%」が住宅ローン控除額となり、原則13年間もしくは10年間に渡り所得税から控除されます。
フルローンだと住宅ローンを組む金額が増えるので、その分住宅ローン控除額が増えることになります。
例えば、3,500万円の住宅を購入する際に、頭金700万円用意した場合と、頭金0円だった場合の住宅ローン控除額を比較してみましょう。
ローンの借入残額 | 住宅ローン減税控除額 | |
頭金700万円 | 2,700万円 | 18万9,000円 |
頭金0円 | 3,400万円 | 23万8,000円 |
このように、どちらも住宅ローンの元金を1年間で100万円返済したとすると、フルローンであれば住宅ローン控除額が年間4万9,000円増えます。
メリット②:貯蓄を生活費として残しておける
20代は転職や出産などライフスタイルの変化が比較的多く、それにともない収入面にも変化があります。例えば転職をすると給与が減ってしまう可能性があります。また、出産の場合は産休・育休に入ることで通常の給与の代わりに産休・育休手当が収入源となります。
給与や収入の変化があっても、住宅ローンに加えて生活費の支払いを無理なくできるように十分な貯蓄があると安心です。
デメリット:ローンの返済総額が多くなる
頭金を支払わない分、利息含め毎月の返済額が増えてしまいます。さらに、今後必要な出費は住宅ローン以外にもあることを考慮しておかなければなりません。
まず、具体的にいくらほど毎月の返済額が増えるのかを調べてみましょう。
例えば、3,500万円の住宅を購入した際に、頭金を700万円支払った場合とフルローンにした場合を比較します。
毎月の返済額 |
|
頭金700万円 | 89,345円 |
頭金0円 | 115,818円 |
※milize proの住宅ローン計算機にて、返済期間30年、全期間固定1.2%、元利金等返済の場合
※各返済額はあくまで概算値です。
今回のケースでフルローンの場合には、毎月の返済額が26,473円多くなります。
「2万5,000円ちょっとなら負担ではない」と考える方もいるかもしれませんが、マイホーム以外にも大きな出費が増えてくる可能性があります。
例えば子どもが生まれた場合は教育費が必要です。教育費はマイホーム同様、人生の三大支出の一つといわれています。
文部科学省のデータによると、幼稚園から大学卒業までの平均的な教育費は、すべて公立だった場合で約770万円、すべて私立だった場合で約2,200万円といわれています。
また、マイカーを購入する場合は、その分の費用も考慮する必要があります。
新車の場合は、購入価格は100万〜300万円が相場ですが、さらに維持費や初期費用もかかります。
フルローンにして毎月の返済額が増える場合には、こういった他の費用にも注意しておきましょう。
まとめ
いかがでしたか。マイホームは大きな買い物のため、頭金を準備することで利息を減らし、少しでも総支払額を抑えることは大切です。しかし、20代でまだ手元の自己資金が少ない場合は、フルローンにして貯蓄を確保しておくのも一つの方法です。
住宅ローンの頭金の適切な金額は人によって異なります。ライフプランを考えながら自分たちの家計に合う方法を探しましょう。
<執筆者>
森島 静香(MILIZE提携FPサテライト株式会社所属FP)
京都出身、大阪在住。人材紹介会社勤務。キャリアカウンセラーとして顧客の転職活動を支援中。
中立の立場で顧客の相談に乗る中で、お金に関するより専門的な知識を身につけたいと考え、FP資格を取得。
プライベートでも2児の母として、育児を経験しており、顧客目線でわかりやすい情報を届けるFPを心掛けている。