旦那が亡くなったら遺族年金はいくらもらえる?生命保険以外にもなにかあるの?

2021/08/20

家族を持ったり、子供ができたりすると、保険のセールスの方がやってきて、

「万が一のときの手当はできていますか?」

と上品に聞いてくれたりしますよね。

「旦那が死んだら家族はちゃんとやっていけるのか?」ということだ。

意外と奥さんは細かいことは知らなかったりして・・・

 

そこで当然保険に加入するのだが、そもそも保険はいくらはいればいいのだろう?

これが常に最初で一番大事な質問だ。

また今ある契約はどうやって計算したんだろう?なんて人も多いはずだ。

 

その保険の受取金額を考えるのに、一番大事な遺族年金について学んでおきましょう。

私の場合、なにも考えずに「必要補償額が3000万円になります!」と、いわれ加入した記憶が・・・

そもそも金融資産が数千万あります、相続で相応の財産がありますなんて方は、保険の必要がないのだ。

 

あなたの遺族は・・・

あなたが35歳で金融資産も例えば100万円しかなく、なんの保険も入っていないとしよう。

子供は5歳、これからが大変というところで、あなたのご主人はこの世をさることになるとしましょう。

 

遺族の生活費は生前年収500万円で貯金が50万/年くらいできていたので、私の分を除くと450万の60%で生活をするとしよう。

これが270万円/年くらいかな。

これが50年継続するとすると、1億3500万円かかる。

(住宅ローンは団信がついているので、住宅ローンの負担はなくなる。)

 

お子さんの教育費(大学まで公立と国立でも学費だけで1000万はかかる)を考えると1500万円が必要としよう。

なんとここまでで1億5000万円になる。

 

奥さん(35歳)は看護師の免許をもっているので、

年収(手取り)450万円は稼げるので、すぐに職場復帰をして、65歳まで30年間働くとすると、これで1億3500万円となる。

(まあ奥さまも健康でずっと働けばの話であるが…)

あと1500万円足りない・・・・・・

 

だから1500万円の保険が必要となるのではなく、

実は国から支払われる「遺族年金」というものがある。知っていましたか?

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遺族年金?

公的にはなにか補助をしてくれるのか?

生計を維持している人が亡くなったとき、残された家族に支給されるのが

「遺族年金」 です。

国民年金法、厚生年金保険法等に基づき、被保険者が死亡したときに、残された遺族に対して支給される日本の公的年金の総称を遺族年金と言います。

亡くなった人が

  • 国民年金に加入していた自営業者なら 「遺族基礎年金
  • 厚生年金に加入していた会社員なら「遺族基礎年金」に加え「遺族厚生年金」

を受け取ることができます。

 

簡単に整理しておくと、奥さまが働いていて、ご主人が家庭で子供を育てる家庭もあるので、以下のような人が遺族年金をもらえる対象です。

 

遺族年金をもらえる対象 もらえる年金
サラリーマン
  • 夫・妻・子供
  • 父母
  • 祖父母
遺族基礎年金遺族厚生年金
公務員
  • 夫・妻・子供
  • 父母
  • 祖父母
遺族基礎年金遺族共済年金
自営業
  • 子供のいる妻
  • 子供

子供がいない方はもらえません

遺族基礎年金

 

現在の遺族年金制度の仕組み

そこで制度の仕組み表をみてみよう。

今日のテーマ、「子供のいる奥さま」で、該当するのがピンクで塗られているところだ。

遺族 遺族基礎年金 遺族厚生年金(注1)
若齢の遺族配偶者の場合 子のいる場合
(注2)
子が18歳に達するまで支給される 夫の報酬比例の年金額の3/4が支給される(注3・注4)
配偶者死亡時の年齢
が55歳以上の場合
支給されない 60歳以降妻の報酬比例の年金額の3/4が支給される(60歳までは支給停止、子が遺族厚生年金の受給権を有する場合は夫の遺族厚生年金は支給停止される)
配偶者死亡時の年齢
が55歳未満の場合
支給されない 支給されない(この場合、18歳未満の子に対しては妻の報酬比例の年金額の3/4が支給される)
子のいない場合 配偶者死亡時の年齢
が35歳未満の場合
支給されない 夫の報酬比例の年金額の3/4が支給される
配偶者死亡時の年齢
が35歳以上の場合
支給されない 夫の報酬比例の年金額の3/4に加えて40歳以降65歳未満の間は中高齢寡婦加算(40歳までは夫の報酬比例の年金額の3/4のみ支給)が加算される(注4)
配偶者死亡時の年齢
が55歳以上の場合
支給されない 60歳以降妻の報酬比例の年金額の3/4が支給される(60歳までは支給停止)
配偶者死亡時の年齢
が55歳未満の場合
支給されない 支給されない
高齢の遺族配偶者の場合 支給されない 配偶者の報酬比例の年金額の3/4が支給される
(参考)
自分の老齢厚生年金の受給権がある場合には、実際に受給する年金については、
(1)遺族厚生年金のみを受給する
(2)自分の老齢厚生年金のみを受給する
(3)死亡した配偶者の報酬比例の年金額の1/2と自分の老齢厚生年金の1/2の額を併給するという3つから選択する。
支給されない

(注1) 現役期に夫が死亡した時の妻や子に対する給付については、夫の被保険者期間が25年未満である場合、遺族厚生年金の金額は25年で計算される。
(注2) 「子」とは、18歳未満又は障害状態で20歳未満の子をいう。
(注3) 夫の死亡当時妻が35歳未満であっても、子どもが18歳に達した時点で妻が35歳以上である場合は、40歳以降65歳未満の間中高齢寡婦加算が加算される。
(注4) 遺族厚生年金を受けている妻が65歳になり、自分の老齢基礎年金を受給することができるようになったときに、昭和31年4月1日以前に生まれた者に対しては、中高齢寡婦加算と老齢基礎年金の差に相当するものとして、経過的寡婦加算が加算される。
(注5) この表で整理したケース以外に、夫の年齢、妻の年齢、子の年齢によって様々なケース(年金受給者だが18歳未満の子がいる、年金受給者である夫は死亡したが自らはまだ年金受給年齢とはなっていないなど)が生じ得るが、ここでは省略している。
(注6) 遺族厚生年金は、この表で整理した以外にも、子、父母、孫、祖父母が支給対象となるが、ここでは省略している。また、国民年金では独自制度として寡婦年金、死亡一時金があるが、ここでは省略している。

 

この表から言って、「夫の報酬比例の年金額の3/4が支給される」となっている。これではわからないので細かい例を見てみよう。

 

実際の例

サラリーマンの方を例に取ってみてみましょう。厚生労働省のホームページ上の例を使用します。

平均標準報酬月額が367,000円として、厚生年金は300月のみなし加入期間が適用されたケースで見てみましょう。

 

平成27年9月分からの保険料額・標準報酬月額の一覧表

 

若齢の遺族配偶者(妻)の遺族年金(1)の図

厚生年金に加入していた夫が死亡時に妻に18歳未満のこともがある場合を見てみると、一生にわたりどんなお金がもらえるのだろうか?

子供がいま5歳、奥さまがいま30歳であるとして計算してみよう。

 

夫の死亡時~子が18歳になるまでは(奥さまが30歳から43歳まで)

月額13.9万円  

遺族厚生年金(4.9万円)+遺族基礎年金(6.7万円)+遺族基礎年金(子の加算額)(2.3万円)

  • 遺族厚生年金が6.7万円 : 平均標準報酬月額×7.125/1000×被保険者期間×3/4(被保険者期間が300月に満たない場合は300月)
  • 遺族基礎年金 : 804,200円+子の加算額
  • 子の加算額 : 以下
    • 1人 231,400円
    • 2人 462,800円
    • 3人 462,800円
    • +1人につき 77,100円加算

 

これが例えば子供が5歳で18歳まで13年間もらったとして、

13.9万円×12月/年×13年

生涯で2,168.4万円

 

子が18歳から64歳まで、妻が40歳以上(奥さまが43歳から65歳)

月額9.9万円

遺族厚生年金(4.9万円)+中高齢寡婦加算(5.0万円)

  • 遺族厚生年金: 平均標準報酬月額×7.125/1000×被保険者期間×3/4(被保険者期間が300月に満たない場合は300月)
  • 中高齢寡婦加算 : 603,200円

妻が43歳から65歳までの22年間もらったとして、

9.9万円×12月/年×22年

生涯で2,613.6万円

 

奥さまが65歳以降

月額11.6万円

遺族厚生年金(4.9万円)+老齢基礎年金(6.7万円)

遺族厚生年金 : 平均標準報酬月額×7.125/1000×被保険者期間×3/4(被保険者期間が300月に満たない場合は300月)

老齢基礎年金 : 804,200円×納付済月数×免除月数×1/3/加入可能年数×12

妻が65歳から85歳まで20年間もらったとして、

11.6万円×12月/年×20年

生涯で2,784万円

 

この3つの時期を足して、総額で7,566万円(85歳まで)が奥さまの一生で支払われる

意外と多い気がしますか?少ないですか?

さきほど1500万円足りないとしていたが、この遺族年金があれば少し余裕も出てくるのではないか?

ご主人の生命保険に5000万円とか入って、毎月の保険代に泣いている人は一度遺族年金についても計算してみよう。

 

気を付けないといけないのは、自分の老齢厚生年金の受給もできる場合(65歳以上の配偶者の場合)、老齢厚生年金が全額支給され、遺族厚生年金は老齢厚生年金相当額が支給停止となる。

ただし、老齢厚生年金の額が、遺族厚生年金の額、あるいは「遺族厚生年金×2/3+老齢厚生年金×1/2」の額よりも低額となる場合は、差額を遺族厚生年金として受給できます。

老齢基礎年金・老齢厚生年金は課税対象だが遺族厚生年金は非課税なので、実際には税引き後の手取り額で受け取るパターンを選択することになります。これは次回に説明します。

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