【運用】行動ファイナンスを学び投資力アップ-行動バイアスが与える影響を知って投資判断に生かそう⑤~後知恵バイアス~

2021/08/19

投資や資産運用の世界で、投資家の意思決定に影響を与え、合理的な判断・行動をしばしば妨げる「行動バイアス」 (先入観や偏見)。心理学をファイナンス分野へ応用し、金融分野における人間の心理面の影響を分析する「行動ファイナンス」を学び、投資の際のよりよい意思決定、投資力アップにつなげていきましょう。

 

代表的な「行動バイアス」(先入観や偏見)について、しくみや影響などをひとつずつかんたんに見ていく、このシリーズ。
第5回目は、認知バイアスの一種である、後知恵バイアス (Hindsight Bias) について見ていきたいと思います。

 

(このシリーズでは、Michael M.Pompian,著、Behavioral Finance and Wealth Management (second edition) を参考に、その内容をかんたんにお伝えしていきます)

 

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行動バイアスについて⑤ -後知恵バイアス


今回は、認知バイアスの一種で、後知恵バイアス (Hindsight Bias)についてみてみます。

 

【バイアスの説明】

あるイベントが実際に起こった後になって、本当は事前に予測できていた訳ではないにも関わらず、あたかも自分はそのイベントが起こることが事前に予測できていたような思い込みをしてしまうのが、後知恵バイアスの影響です。 実際には分かっていた訳ではないのに、「やっぱりそうなったか」という気持ちを持ってしまうわけで、認知バイアスの中で最も顕著な例ともいえます。

 

 

人は、将来起こり得た様々な可能性の中で、実際に起こった事象については、他の事象に比べより容易に深く理解することができます。 このことによって、人々は自身の予測能力の正確性を過信してしまうのです。 実際には事前にはそれほどわかっいなかったにも関わらず、正しい予測ができていたと思い込んでしまいます。

 

【投資判断におけるバイアスの影響例】

後知恵バイアスの影響として、投資の世界でも実際にコトが起こった後になってから、投資 "ギャンブル" の結果が予測できていたと思い込んでしまう例はよく見られます。過去のバブル期(ITバブルやミニ不動産バブルなど)においても、ほとんどの市場参加者はバブルの認識は持ち合わせていませんでした。しかし、バブル崩壊後になると、その当時にバブルが弾けることは予想できたという人が多くでてきます。

後知恵バイアスは、投資家が投資判断を行う際に誤った安心感を与えてしまうのが最大の問題です。具体的に下記のような影響が見られます。

  • 投資対象の価格が上昇した場合、後知恵バイアスの影響を受けた投資家は、自身の記憶を書き換え、あたかもその上昇は予測できたように思い込みます。 これが繰り返され、そうした投資家は、自分の予測能力を過信し、過度なリスクを取るようになってしまいます。
  • 後知恵バイアスの影響を受ける投資家は、過去の誤った予測の記憶を消し去ってしまう傾向があります。これは、認知的不協和バイアスの場合と同様で、自分に都合のよいような判断をしてしまい、過去の過ちから学ぶことができなくなってしまうのです。
  • 後知恵バイアスの影響を受ける投資家は、投資信託のパフォーマンスが悪い場合に、その運用担当者を不当に非難してしまいます。こうした投資家は、過去を振り返ったときに、全ての展開は必然に起こったと感じ、したがって運用がうまくいっていない運用担当者を責めてしまいます。実際には、運用担当者がとても優秀であっても、その投資スタイルがその時のマーケットにうまく合っていないことは多々おこります。
  • 反対に、後知恵バイアスの影響を受ける投資家は、投資信託のパフォーマンスが良い場合に、その運用担当者を過度に評価してしまいます。実際には、運用担当者の投資スタイルがたまたまその時のマーケットにぴったり合っていただけかもしれません。

     

【バイアスの影響度チェック】
シナリオA:
あなたの行った投資が値上がりしました。しかし、あなたは、投資対象の成長力を評価して投資を行ったのではないとします。 あなたの反応は次のうちどれでしょうか。

  1. 投資対象が値上がりする理由は気にしません。値が上がったということは、自分は投資家として良くやったということ。次の投資判断も自信を持って臨めます。
  2. 投資対象が値上がりしたものの、自分が重要だと思った点がパフォーマンスに影響しなかったことが気がかりです。このようなケースでは、通常、自分がその投資を判断した理由、および、うまくいった理由をよく考えるようにします。たぶん次回はより慎重な判断をすると思います。

 

シナリオB:
あなたの行った投資が値下がりしてしまいました。あなたの反応は次のうちどれでしょうか。

  1. 通常は自分を責めません。投資がうまくいかないのは、たんに運がなかっただけかもしれません。どこが悪かったのか詳細は探らずに、損切りをして次の機会を探すことにします。
  2. 自分の行った投資のどこが悪くてうまくいかなかったのか調査したいと思います。自分の投資判断の根拠を大切にしているので、そのような投資パフォーマンスとなった原因を知っておく必要があります。

 

 

 

では、結果を見てみましょう。

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後知恵バイアスは、自分自身で認識することが難しく、影響度を測りにくいバイアスです。このようなテストを行って影響度を掴みましょう。いずれのケースでも 1)を選んだ方は後知恵バイアスの影響を受けやすいといえます。

  

【投資行動におけるアドバイス】

他のバイアスの場合と同様に、後知恵バイアスの悪影響を避けるためには、まずバイアスの存在を認識し、その影響を理解することが大切です。その上で次のようなことを心がけましょう。

 

投資パフォーマンスが良好な場合、後知恵バイアスにより将来もうまくいくと過信してしまっているような可能性があります。 プロの場合であっても、バブル期、およびその崩壊後に後知恵バイアスによってどのようなことが起こったか (上記のとおり、ほとんどがバブルの認識は持ち合わせておらず、バブル崩壊後になると、その当時にバブルが弾けることは予想できたという人が多く存在する) などを思い起こせるようにするとよいでしょう。

 

一方、投資パフォーマンスが悪いような場合は、そうした過去の記憶を消し去ろうとし、過去から学ぶことをさまたげるようになる可能性があります。 投資判断に至った経緯を良く分析するように心がけなけることが大切です。

 

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行動ファイナス、行動バイアスについて (ご参考)


従来の経済学や投資理論の世界では、「人は完全に合理的な判断のもとで自己の利益のみを目的に行動する」ことが大前提になっています。ところが現実の世界ではそのようなことはなく、実際の投資の世界では、先入観や思い込み、短絡的な判断をもとに投資の意思決定を行うなどということが多くみられ、また、そのような行動が市場全体に大きな影響を与えているケースがみられます。

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行動ファイナンスは心理学をファイナンス分野へ応用することで、こうした人々の投資行動がどのように起こるかを理解しようとしたもので、2000年3月のハイテクバブル、2008-2009年の金融危機などの際に特に注目が集まりました。 行動ファイナンスは個々の投資家レベルの行動から市場全体レベルの現象までをモデル化し解釈しようとします。すなわち

  1. 伝統的な経済理論における合理的な行動者から逸脱する投資家個人の行動やバイアス(先入観・偏見) (行動ファイナンス-ミクロ)
  2. 行動ファイナンスモデルにより説明できる効率的市場仮説に対するアノマリー (行動ファイナンス-マクロ)

の検証を試みるものです。

 

ここでは「行動バイアス」について、個人投資家の投資判断に与える影響をみていきます。

 

行動バイアス(先入観・偏見)は、投資家の心の底に潜むもので、誤った認識にもとにした理由づけや、感情や気持ちに左右された理由づけにより導かれる非合理的な金融判断をもたらすものです。投資行動における行動バイアスの影響を理解することによって、投資家はよりよい投資結果を達成する可能性が高まると期待されます。

 

「行動バイアス」は大きく次の二つに分けられます。

  • 「認知バイアス」 (Cognitive Bias) は、統計的な誤認、情報分析上の誤解、記憶違いなどによって、合理的な思考からはずれた(投資)判断をもたらすもの
  • 「感情バイアス」 (Emotional Bias) は、自然に生じる感情や態度によって合理的な判断を狂わせるもの

 行動バイアス図

バイアスの影響を理解し、克服することで、よりよい行動(投資判断など)が可能となることから、ここでは、代表的なバイアスの仕組みや影響について、順番にかんたんな説明をしています。

 

なお、本セクションでは米国のMichael M.Pompian,著、Behavioral Finance and Wealth Management (second edition) を参考に「行動バイアス」についてまとめています。 ご興味のあるかたは、ぜひ原書をご覧ください。

 

 

 (注意)ここでのご説明は、投資に関する一般理解のみを目的としているものであり、投資アドバイスに代わるものではありません。投資商品の価額や投資から得られる収益は変動する可能性があり、投資元金を割り込む可能性があります。 全ての投資判断は100%ご自身の責任において行ってくださいますようお願いします。

 

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