【運用】行動ファイナンスを学び投資力アップ-行動バイアスが与える影響を知って投資判断に生かそう③~確証バイアス~

2021/08/19

投資や資産運用の世界で、投資家の意思決定に影響を与え、合理的な判断・行動をしばしば妨げる「行動バイアス」(先入観や偏見)。心理学をファイナンス分野へ応用して金融分野における人間の心理面の影響を分析する「行動ファイナンス」を学び、投資を行う際のよりよい意思決定、投資力アップにつなげていきましょう。

 

代表的な「行動バイアス」(先入観や偏見)について、しくみや影響などをひとつずつかんたんに見ていく、このシリーズ。
第3回目は、ひきつづき認知バイアスの一種である、確証バイアス (Confirmation Bias) についてみてみたいと思います。

 

(このシリーズでは、Michael M.Pompian,著、Behavioral Finance and Wealth Management (second edition) を参考に、その内容をかんたんにお伝えしていきます)

 

関連記事:

 

pixta_8160295_S

 

行動バイアスについて③ -確証バイアス


今回は、認知バイアスの一種で、確証バイアス (Confirmation Bias)についてみてみます。

 

【バイアスの説明】
人は自分自身の信念や先入観をもとに、自論を確認できるような考え方・情報のみを受け入れ確証し、反する考え方を避けることで、自身の信念・先入観を補強するような行動をとる傾向があります。これが確証バイアスです。 

 

例えば、待ちに待ったテレビを購入した際などが典型的です。 購入者は同じ型のテレビをより高い値段で販売している店に行き、その値段を確認することで、自分自身が‟良い” 購入判断をしたことの確証を得ます 第1回目の記事で取り上げた「認知的不協和」(購入した判断とその判断が間違っている可能性との不協和)を避けるためにこのような行動をとってしまうわけです。

 

【投資判断におけるバイアスの影響例】

  • 確証バイアスの影響を受ける投資家は、既に投資を行っている対象に対する信念を確認できる情報をのみを受け入れようとして、自身の信念に反する情報を探そうとしません。 こうした行動は、投資家が保有株の下落などのサインを見落とすことにつながってしまいます。
  • 事前に決められたスクリーニングをもとに投資を行う際にも確証バイアスはしばしばあらわれます。 例えば年初来高値を更新した株式への投資などを行う場合などです。投資家はそのスクリーニング結果を裏付けるような情報のみに目が行ってしまい、反する情報を見落としてしまいます。
  • 社員による自社株への過度な集中投資も、確証バイアスによってよくもたらされます。人々は自然と自分が働く会社の好業績につながるような情報に重きをおいてしまうものです。
  • 投資家は確証バイアスにより、十分に分散されないポートフォリオを保有し続けてしまう可能性もあります。特定の株式を魅力的に思い込んでしまう投資家が多く見られ、彼らはそのような株式に偏った投資をしてしまいます。 こうような投資家は投資対象に対するネガティブな情報には全く耳を傾けようとはせずに、その投資対象をサポートするような情報のみを求めてしまうのです。

 

【バイアスの影響度チェック】
シナリオA:
あなたは十分な調査をした後にある株式に投資をしたとします。 その後プレス発表にて、その企業のメイン商品ラインに何かしら問題があるかもしれないと述べられているのを見かけます。ただし、発表ではさらに、その企業が今年後半に全く新しい商品を市場投入するかもしれないことも述べられています。あなたは、どのような行動をとるでしょうか。

  1. 新しい商品のアナウンスに目が行き、その新商品についてさらに調査を行う。
  2. 問題のあるかもしれない商品ラインに目が行き、さらに調査を行う。

 

シナリオB:
あなたは十分な調査をした後にある株式に投資をしたとします。 その後その株式はあなたの予想とは異なる理由で上昇を見せました。(例えば、企業の新商品による好業績を予想していたところ、株価上昇をもたらしたのは、より古い商品の再起であった場合など) あなたは、どのような行動をとるでしょうか。

  1. 企業業績は良いので全く心配は要らない。株価上昇により利益を生んでおり、この投資はうまくいっている。
  2. 現状は喜ばしい状況だが、この投資については心配でもある。ポジションを保有するロジックについて確認するために、さらなる調査が必要だ。

 

シナリオC:
あなたは新興国債券ファンドに投資すると判断したとします。 入念な調査によりあなたはこの投資が円の下落に対するヘッジになると確信しました。投資をして3か月後、円はファンドの通貨に対してそれほど下落していませんでしたが、ファンドのパフォーマンスは良好でした。あなたが想定した状況とは異なりますが、あなたはどのような反応をするでしょうか。

  1. そのファンド投資を続ける。投資パフォーマンスが良好であれば、それがどのような理由でもたらされているかは重要でない。
  2. ファンドパフォーマンスが良好な理由を探るための調査を行い、ファンド投資を続けるかどうかの材料とする。

 

 

いずれかのケースで選択肢1. を選んだ人は、確証バイアスの影響を強く受ける傾向があると考えらます。

 pixta_8669111_M

 

「え~私まさに1番を選んでしまいました!?」

  

【投資行動におけるアドバイス】
確証バイアスの悪影響を避け、より賢明な投資家になるためには、まずバイアスについての認識を深めることが大切です。 その上で、次のような点に注意しましょう。

  • まずはバイアスの存在を知ること。それが、投資判断を確認する情報だけでなく、反する情報を探ることにつながります。 投資判断に反する情報の存在が、そのまま投資が誤りだったことにつながるわけではありません。全方位の情報を吟味することで、より正しい判断をその後導ける可能性が高まります。
  • トレンドラインの上方ブレイクなど、あらかじめ設定されたスクリーニング条件などによる投資判断の場合には、多方面からその判断を検証することが大切です。 企業や業界のファンダメンタル分析などは新たな情報を与えてくれることが期待できます。
  • 勤務先企業の株式へ過度に集中した投資を行うべきではありません。 確証バイアスに備えるため、勤務先企業に関する悪いニュースには特に敏感になるべきです。
  • 勤務先以外の企業であっても、魅力的に映る企業への投資集中度が高い場合には、常に悪いニュースに目を光らせることが大切です。 

 

行動ファイナス、行動バイアスについて (ご参考)


従来の経済学や投資理論の世界では、「人は完全に合理的な判断のもとで自己の利益のみを目的に行動する」ことが大前提になっています。ところが現実の世界ではそのようなことはなく、実際の投資の世界では、先入観や思い込み、短絡的な判断をもとに投資の意思決定を行うなどということが多くみられ、また、そのような行動が市場全体に大きな影響を与えているケースがみられます。

 pixta_1534912_S

行動ファイナンスは心理学をファイナンス分野へ応用することで、こうした人々の投資行動がどのように起こるかを理解しようとしたもので、2000年3月のハイテクバブル、2008-2009年の金融危機などの際に特に注目が集まりました。 行動ファイナンスは個々の投資家レベルの行動から市場全体レベルの現象までをモデル化し解釈しようとします。すなわち

  1. 伝統的な経済理論における合理的な行動者から逸脱する投資家個人の行動やバイアス(先入観・偏見) (行動ファイナンス-ミクロ)
  2. 行動ファイナンスモデルにより説明できる効率的市場仮説に対するアノマリー (行動ファイナンス-マクロ)

の検証を試みるものです。

 

ここでは「行動バイアス」について、個人投資家の投資判断に与える影響をみていきます。

 

行動バイアス(先入観・偏見)は、投資家の心の底に潜むもので、誤った認識にもとにした理由づけや、感情や気持ちに左右された理由づけにより導かれる非合理的な金融判断をもたらすものです。投資行動における行動バイアスの影響を理解することによって、投資家はよりよい投資結果を達成する可能性が高まると期待されます。

 

「行動バイアス」は大きく次の二つに分けられます。

  • 「認知バイアス」 (Cognitive Bias) は、統計的な誤認、情報分析上の誤解、記憶違いなどによって、合理的な思考からはずれた(投資)判断をもたらすもの
  • 「感情バイアス」 (Emotional Bias) は、自然に生じる感情や態度によって合理的な判断を狂わせるもの

 行動バイアス図

バイアスの影響を理解し、克服することで、よりよい行動(投資判断など)が可能となることから、ここでは、代表的なバイアスの仕組みや影響について、順番にかんたんな説明をしています。

 

なお、本セクションでは米国のMichael M.Pompian,著、Behavioral Finance and Wealth Management (second edition) を参考に「行動バイアス」についてまとめています。 ご興味のあるかたは、ぜひ原書をご覧ください。

 

 

 (注意)ここでのご説明は、投資に関する一般理解のみを目的としているものであり、投資アドバイスに代わるものではありません。投資商品の価額や投資から得られる収益は変動する可能性があり、投資元金を割り込む可能性があります。 全ての投資判断は100%ご自身の責任において行ってくださいますようお願いします。

友だち追加

© 2024 マネニュー