【運用】GPIFって海外の年金ファンドとどう違う?株式50%は過激な投資なの?ハイリスク?

2021/08/19

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、日銀の追加金融緩和と同日の10月31日、新たな資産構成の目安を発表した。

GPIF

これについてはいろいろな意見がネット上でもあがっている。 その中では株式をこれ以上増やすのはリスクが高すぎるというものが多い。

今回の見直しで、

株式と債券の割合が50:50

国内・海外の割合が60:40

という割合になっている。 

 

素人的に半分も株式に投資するというのは、なんとなくリスクが高くはないか? それだけのリターンがとれるのであろうかと、心配になってしまう。

では他国のファンドはどういう配分をしているのかを見てみることにしよう。

実際に見てみると、実は意外な配分だった。

以下は他国のファンドの詳細を見ていく。

GPIFPIC

 

 

海外の年金基金はどんなものがある?


 海外のファンドはどんなのがあるのかと調査を開始。

ランキングを見ると、GPIFは海外年金ファンドの規模ランキングでもダントツの一位である。

 

ファンド 総資産 USドル (in 10億ドル) 設定年
日本 Government Pension Investment Fund $1370 2006
ノルウェー Government Pension Fund of Norway $856 1990
米国 Civil Service Retirement and Disability Fund $832 1920
オランダ Stichting Pensioenfonds ABP(ABP) $427 (€309) 1922
韓国 National Pension Service (NPS) $400 1988
米国 Thrift Savings Plan (TSP) $330 1986
米国(カリフォルニア州) California Public Employees' Retirement System (CalPERS) $289.8 1932
オランダ Stichting Pensioenfonds Zorg en Welzijn (PFZW, formerly PGGM) $197 (€142.8) 1969
米国(カリフォルニア州) California State Teachers' Retirement System (CalSTRS) $189.1 1913
カナダ Canada Pension Plan and CPP Investment Board $183 (CAD$189) 1965
中国 National Social Security Fund $177.4 2000
カナダ(ケベック州) Caisse de dépôt et placement du Québec (The Caisse, or CDPQ) $176 1965
マレーシア Employees Provident Fund $130 1991
カナダ(オンタリオ州) Ontario Teachers' Pension Plan $130 1990
ブラジル Caixa de Previdencia dos Funcionários do Banco do Brasil(PREVI) $80 1904
アイルランド National Pension Reserve Fund(NPRF) $30 2001
フランス Pensions Reserve Fund (France)(NPRF) $56 2001

(WIKIPEDIA掲載ランキングをシミュライズで翻訳・編集)

 

上記より、

  • ノルウェーのGovernment Pension Fund of Norway
  • 米国カリフォルニア州 CALPERS、
  • 韓国 National Pension Service (NPS)

あと年金ファンドとは性格が違うのですが、上記には入っていないソブリン・ウエルス・ファンド(英: Sovereign Wealth Fund、略:SWF)、府が出資する投資ファンドを見てみました。

  • シンガポールの政府系ファンド GIC

について簡単に調査してみた。かならずしも日本の資産分類と同一ではないものの、どのようなポートフォリオかを確認することができました。

 

 

ノルウェー Government Pension Fund of Norway は株式割合高


 ノルウェーは日本よりもは経済的にはサイズは小さく、運用の市場も国内ではかなり限定的である。

資産配分についてのガイドライン(2013年時点)

  • 資産は外貨・海外資産のみ
  • 株式は60%
  • 債券・不動産は40%(不動産は5%まで可能)
  • 地理的な配分は国債についてはGDPによるウェイト 、株式・社債については市場価値によるウェイトを使用

株式が50%を超えている。国内の資産はないため、海外の株式で60%となっている。不動産が5%と明示されているのが特徴である。

またその資産配分の方法もかなり細かく指定されている。(GDP加重、時価加重等)

 

 

米国カリフォルニア州 CALPERS は株式割合高


 カリフォルニア州のカルパースはおそらく世界でもかなり有名な年金基金で運用能力も高いと言われており、過去のパフォーマンスも秀でているファンドだ。

 

すこし分類の属性・名前は違うが以下のようになっている。

アセットクラス 現在の 配分 (%) 中間戦略目標 (%) 投資額 ( 10億ドル)
成長(Growth) 63.70% 61.00% $192.00
上場株 53.30% 51.00% $160.60
PE(未上場株) 10.40% 10.00% $31.40
収入(Income) 17.70% 19.00% $53.20
現物資産 9.90% 12.00% $30.00
不動産 8.60% 10.00% $25.90
森林 0.80% 1.00% $2.30
インフラ 0.60% 1.00% $1.80
流動性 1.50% 2.00% $4.60
インフレーション 5.50% 6.00% $16.50
トラストレベル 2 1.70% N/A $5.00
全ファンド合計 100.00% 100.00% $301.40
 (2014年8月31日時点)

株式系(Growth)がおよそ63.7%、債券系(Income)が17.7%となっているので、やはり株式の配分が高い。

地理的な配分は示されていないが、

「代替投資」(株や債券など伝統的資産ではなく、PE・インフラ・不動産などの資産)が多く取り入れられていることがわかる。

日本の取り組みも始まったが、真剣に取り組まないといけないと思われる。

 

韓国 National Pension Service (NPS) は債券割合高


 韓国の年金ファンドNPSは以下のような配分になっている。

NPSは株式で約31.2%、債券が59.20%で、債券の割合が6割近くあり、Fixed Incomeへの依存度が高い。

 韓国の中央銀行の金利が2.0%(2014年11月現在)なので、まだ債券運用での利回りが国内債でも確保することができるのが理由かもしれない。

 

ファンド区分 価値 割合
ファンド総額 455.5 100%
福祉 エリア 0.1 0.00%
金融資産投資 454.8 99.80%
国内株式 89.9 19.70%
海外株式 52.6 11.50%
国内債券 250.8 55.00%
海外債券 19 4.20%
代替投資 41.9 9.20%
キャッシュ 0.6 0.10%
その他 0.6 0.10%

(単位 1兆ウォン,2014年8月時点)

 

 

シンガポールの政府系ファンド GIC は株式割合高


 政府系ファンドは中東やアジアの国々でオイルマネーや海外準備金を使った政府主導のファンドである。

資産内容 2014年 2013年
先進国株式 29% 36%
新興国株式 19% 17%
通常債券・キャッシュ 31% 29%
物価連動債 5% 2%
不動産 7% 8%
未上場株(PE) 9% 8%

株式は未上場株まで含めると57%(先進国株式+新興国株式+未上場株PE)となり高い。

債券は不動産と合わせて43%となっている。カルパースのように株式の割合が高くなっている。

 

地域的な配分は以下のようになっている。

(単位は%)

地域 2014年 2013年
米州 米国 34 36
南米 4 4
その他 4 4
欧州 英国 8 8
ユーロ 14 11
その他 7 6
アジア 日本 10 10
北アジア 14 13
その他 3 5
豪州 オーストラリア 2 3

米州が42%、欧州29%、アジア27%、豪州2%と欧州が比較的高く、アジアよりも高いことがわかる。

2013年から14年で欧州の割合が高くなっており、他の地域はすべて減少となっている。

  • 米州 (44%⇒42%で2%ダウン)
  • 欧州 (25%⇒29%で4%アップ)
  • アジア(28%⇒27%で1%ダウン)
  • 豪州(3%⇒2%で1%ダウン)

 

結論から言うと、あまり日本の50%株式というのは、決して高くはないということがわかった。むしろやや低いと言えるかもしれない。

またPE(プライベートエクイティ、未上場株)、不動産、インフラ等のアルタナティブ投資(代替投資)についての配分が始まっており、

GPIFでも明確にはされていないが、配分を開始しようとしている。今後真剣にこの分野の専門家をGPIFに取り入れていく必要があろう。

 

 


 

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