「NISAが新しくなる」と聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
NISAは2014年1月から始まった少額投資非課税制度です。通常は株式や投資信託などの金融商品を投資・売却して得た利益に対して約20%の税金がかかりますが、NISAを利用すれば毎年一定金額の範囲内の購入であればその税金がかからなくなります。
そのNISAの制度内容が2024年1月から改変されることになりました。
今回は制度の改変内容や、改変することで具体的に私たちの投資にどう影響していくかを、わかりやすく解説していきます。
現行NISAと新NISAの違いを確認しよう
まずは、これまでの現行NISAと2024年から始まる新NISAの制度内容を比較しながら、改変箇所を確認しましょう。
下記は現行NISAと新NISAの制度内容を比較した図です。
現行NISA | 新NISA | |||
名称 | 一般NISA | つみたてNISA | 成長投資枠 | つみたて投資枠 |
制度の併用 | 不可 | 可能 | ||
年間投資枠 | 120万 | 40万 | 240万 | 120万 |
非課税保有期間 | 最大5年 | 最大20年 | 無期限化 | |
非課税保有限度額 | 600万 | 800万 | 1,800万
(この内成長投資枠として1,200万) |
|
制度実施期間 | 2023年まで | 2042年まで | 恒久化 | |
投資対象商品 | 上場株式
投資信託など |
積立・分散投資に適した
一定の投資信託 |
上場株式
投資信託など ※一部対象外商品あり |
積立・分散投資に適した
一定の投資信託 |
対象年齢 | 18歳以上 | 18歳以上 |
※(1)整理・監理銘柄 (2)信託期間20年未満、高レバレッジ型及び毎月分配型の投資信託等を除外
金融庁「新しいNISA」を基にFPサテライトにて作成
これまで「一般NISA」・「つみたてNISA」と呼ばれていた名称が、それぞれ「成長投資枠」・「つみたて投資枠」と呼ばれるようになります。
本記事では現行NISAの内容を指す際は「一般NISA」・「つみたてNISA」、新NISAの内容を指す際は「成長投資枠」・「つみたて投資枠」と記載いたします。
そのほかの改変項目は大きく5つあります。
(1)制度併用の可否
(2)年間投資上限額
(3)非課税保有期間
(4)制度実施期間
(5)非課税保有限度額
上記の図にて変更内容は記載していますが、それぞれの改変内容について具体的に解説していきます。
変更点1「併用可能」
保有できるNISA口座は1人につき1つのため、現行のNISA制度では、一般NISA・つみたてNISAの二つを併用することはできませんでした(一年単位で切り替えは可能です)。
新NISAでは、成長投資枠・つみたて投資枠の併用が可能です。
これまで一般NISA・つみたてNISAどちらかのみしか運用できませんでしたが、2つ両方を運用できることで、投資の幅が広がることでしょう。
変更点2「年間投資上限額の増加」
現行NISAでは、投資ができる年間金額には上限が定められていました。一般NISAでは年間120万円、つみたてNISAでは年間40万円です。
この年間投資上限額が、新NISA制度の成長投資枠では年間240万円、つみたて投資枠では年間120万円に増額します。
さらに変更点1で記載したとおり、2つを併用することが可能なため、合わせて最大で年間360万円まで投資額を増やすことが可能になりました。
変更点3「非課税保有期間が無期限化」
購入した投資の利益を非課税で保有できるのは、NISAの最大の特徴とも言えます。これまでのNISAでは、その非課税で保有できる期間が一般NISAでは5年間、つみたてNISAでは20年間でした。
しかし、新NISAの成長投資枠・つみたて投資枠ともに非課税保有期間が無期限となります。
無期限化することで、現行NISAの「ロールオーバー」という作業にも影響があります。
一般NISAではロールオーバーという作業をすることで、一部期間を延長することができます。
このロールオーバーの仕組みについて理解が難しかったり、ロールオーバーするかどうか考えるのが手間だったという方もいるのではないでしょうか。
新NISA制度ではロールオーバーをする必要がなくなるため、そういった面倒や手間から解放されると言えるでしょう。
変更点4「制度実施期間が恒久化」
現行NISAを利用できる期間は、一般NISAでは2023年まで、つみたてNISAでは2042年(新規買付は2023年)までと決められていました。
新NISA制度では実施期間が恒久化となります。
制度実施期間が恒久化することで、NISAを今から始めてももう利用できる期間が少ないと感じていた方にも、NISAを始めやすくなったと言えるでしょう。
変更点5「非課税保有限度額が新設」
最後の変更点として、新NISA制度には非課税保有限度額が設けられます。これは、NISAで投資をするうえで年間ではなく、生涯を通していくら非課税で金融商品を保有できるかを指します。
その非課税保有限度額は1,800万円、そのうち1,200万円が成長投資枠です。
なお、保有額が1,800万円に達した場合も、売却をすることで非課税保有限度額の枠の再利用が可能になります。
例えば年間360万円を毎年投資することで、5年で非課税保有限度額1,800万円になります。(ここではわかりやすく買付金額の値動きに変動がなかった場合と仮定します。)もし5年目までに360万円を売却した場合、6年目には再度最大360万円投資することができます。
改変内容は投資にどんな影響がある?
これまで制度の変更点を確認してきましたが、これが実際自分たちの投資にどんな影響があるのか、メリットと注意点について解説していきましょう。
メリット
制度内容が変更された最大のメリットは、より長期的で幅広い投資戦略を立てることができる点と言えるでしょう。
改変内容のおかげでNISAを長期間利用することができます。そして長期的な投資をすることで、投資リターンが安定することが見込まれています。金融庁が平成29年につみたてNISAについてまとめた資料では、一定の条件のもと国内外の株式・債券に20年間分散投資した場合、同じ条件で5年間投資した場合よりも投資収益率が安定化したという結果を発表しています。
さらに、投資額が増加し、成長投資枠とつみたて投資枠を併用することで、投資額や投資の幅が増えます。
注意点
しかし、制度内容が改変されるにあたっての注意点もあります。
一般NISAとつみたてNISAのように、成長投資枠はつみたて投資枠よりも、投資対象商品の幅が広いです。
これまでつみたてNISAのみを利用しており、新NISAを機に成長投資枠を始めてみる場合には、運用のプロに任せる投資信託以外にも投資することができます。
その際、株式投資など、経済動向に左右されやすいものやハイリスクを伴うものも含まれるため、それぞれの投資商品の特徴や個別銘柄についてきちんと勉強してから始めるのがお勧めです。
また、引き続きNISAは元本保証はありません。この点にも留意しながら、投資の方法を考えましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回の新NISAの制度内容を把握することで、今までNISAを始めていなかった方も、今までNISAを利用していた方も、自身の資産運用について振り返る機会になるでしょう。
新NISAを始める場合は、そのメリットと注意点を踏まえたうえで、自分なりの投資を進めてくださいね。
<執筆者>
森島 静香(MILIZE提携FPサテライト株式会社所属FP)
京都出身、大阪在住。人材紹介会社勤務。
キャリアカウンセラーとして顧客の転職活動を支援中。
中立の立場で顧客の相談に乗る中で、お金に関するより専門的な知識を身につけたいと考え、FP資格を取得。
プライベートでも2児の母として、育児を経験しており、顧客目線でわかりやすい情報を届けるFPを心掛けている。