どの程度の備えがあれば十分?疾病別医療費ランキング

2022/06/09

厚生労働省が公表した「令和2年簡易生命表 1主な年齢の平均余命」によると、2020年の男女別平均寿命は男性が81. 64年、女性が87. 74年でした。

近年は、2020年頃から世界的に流行している新型コロナウイルス感染症の影響もあり、人々の健康への意識も高まっているように見受けられます。

様々な疾病、感染症、生活習慣病、ケガなどの病気は、健康的な生活を送っていても発病するリスクをゼロにすることはできません。

もしも何かの病気になってしまったら、現在の生活はどうなるでしょうか?あなたは有事への備えができていますか?

本記事では、日本人の死因の中で最も多い病気と病気別医療費ランキングをご紹介しながら、どの病気に対してどの程度の医療費や備えが必要かを一緒にみていきます。

ご自身も家族も安心して健康的な生活が送れるよう、この機会に病気や医療に対する意識を見つめ直してみましょう。

医療費に関する基礎知識

医療費に関する知識のレベルは人によって違うかもしれません。まずは、最低限必要と考えられる医療費の知識についてご紹介します。

国によって負担される医療費

日本の医療費負担は、国民皆保険制度によって世界トップクラスの水準が実現されています。国民皆保険とは、日本国民全員が医療費補助を受けることができる医療保険です。

病気になってもこの医療保険制度を利用することで、6歳以上70歳未満の人は誰でも7割の医療費補助を受けることができ、自己負担分は3割となります。(6歳未満は2割負担、70歳以上は1~3割負担)

また、月ごとの自己負担限度額を超える部分について償還を受けることができる高額療養費制度が存在します。

年収別に月ごとの限度額が決まっており、複数の医療機関で治療を受けた月に医療費総額が限度額を超えていれば、事後的に償還を受けることができます。

公的な医療費補助は病気や施術内容によって医療保険の対象外となることもあるため、注意が必要です。

国民の自己負担となる医療費

国からの医療費補助を除いたとき、3割の自己負担に加え、具体的にはどのような自己負担金が発生するのでしょうか?

まずは、特定の疾患を患って治療に先進医療の技術が必要となる場合です。

先進医療は、厚生労働大臣が定める高度の医療技術を用いた療養と定められており、医療費総額のうち先進医療にかかる費用については全額自己負担となります。

令和4年2月1日時点で、合計81種類の技術が先進医療として認められており、要件を満たした一部の医療機関で療養を受けることができます。

先進医療費のほかに必要な自己負担の費用項目は、療養のために入院が必要となった場合の食事療養費、差額ベット代、ご家族のサポート費用、日用品などの雑費です。

食事療養費は一部補助を受けることができますが、その他の項目については入院時のライフスタイルによって金額が変動します。

ご参考までに、生命保険文化センターが実施した「令和元年度 生活保障に関する調査」によると、1日あたりの平均自己負担費用は23,300円となっています。

疾病別医療費ランキング

病気になった時の医療費に関する概要は理解いただけたでしょうか?

心に留めていただきたいことは、一概に「病気の医療費」と言ってもケースバイケースで、病状や手術・入院の有無などによっても必要となる経費は変動するということです。

どんな病気に、どれほどの医療費が発生する可能性があるのか、知ることができると良いですよね。

そこで、日本人の死因トップ5にランクインする病気や保険適用外の高額な先進医療技術に基づいた事例で、目安となる医療費を示していきます。あくまで参考程度にご覧ください。

日本人の死因トップ5の診療費

厚生労働省の「令和2年 人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、令和2年の死因順位は第一位が悪性新生物<腫瘍>(がん)、第二位が心疾患(高血圧性を除く)、第三位が老衰、第四位が脳血管疾患、第五位が肺炎でした。

厚生労働省の「令和元年度 医療給付実態調査」の全国健康保険協会制度が対象の内容を参考に、上記5つの死因のうち、老衰を除いた4つの疾病で入院した場合に必要となる診療費の目安をまとめています。

(表1) 疾病分類別、1件当たり診療費   (単位:円)

疾病 1件あたり診療費※
悪性新生物<腫瘍>(がん) 769,917
虚血性心疾患 794,012
脳血管疾患 849,590
肺炎 326,446

※1件あたり診療費…疾病別平均入院日数に1日あたり平均診療費を乗じたもの

入院した場合の4つの疾病にかかる一件あたり診療費の平均は約68.5万円です。ただし、上述の高額療養費制度を利用することで、一定額を超える窓口負担分が償還されます。

また、診療費は医療費の一部にあたり、食事療養や薬剤にかかる費用などは考慮されていないので医療費総額はより高い可能性があります。

高額な先進医療費の事例

つづいて、万一、公的医療保険の対象外となってしまう先進医療の医療費が発生する場合の事例を見てみましょう。

先進医療合同会議にて公表された令和2年度の先進技術Aにかかる実績報告に基づいて、件数が上位3つの先進医療技術の自己負担金額を以下の通り試算しています。

先進医療Aの自己負担金額の実績に基づいた順位 (単位:円)

先進医療技術名 件数 自己負担金
1 陽子線治療 1,196 2,714,943
2 MRI撮影及び超音波検査融合画像に基づく前立腺針生検法 1,114 107,640
3 重粒子線治療 703 3,123,757

注)令和2年6月30日時点における先進医療Aに係る費用を参考に、先進医療総額÷件数で算出

がん治療に利用される陽子線治療による療養が必要だとすると、最低でも1件あたり約270万円の自己負担金が必要となり、その他の費用も含めれば医療費総額はさらに高額になります。

ただし、表中の自己負担金は平均値であり、病院や治療内容によっても必要な医療費は変動すると考えられます。

国民医療費における傷病別医療費ランキング

厚生労働省の「令和元(2019)年度 国民医療費の概況」の年齢階級、傷病分類別医科診療医療費を参考に、国民医療保険における疾病別の医科診療医療費の順位を以下に示しています。

ただし、医療費には先進医療技術による費用を含まないことにご留意ください。

(表2) 年齢階級、傷病分類別医科診療医療費(上位5位) (単位:億円)

65歳未満 65歳以上
1 新生物<腫瘍> 16,099 循環器系の疾患 48,828
2 循環器系の疾患 12,540 新生物<腫瘍> 31,360
3 呼吸器系の疾患 11,474 筋骨格系及び結合組織の疾患 17,938
4 精神及び行動の障害 10,261 損傷、中毒及びその他の外因の影響 16,769
5 腎尿路生殖系の疾患 8,212 腎尿路生殖系の疾患 14,831

年齢階級に応じて医療費のかかる傷病が異なり、65歳以上の世代が医療費総額の大部分を占めていますが、どの年代においても、がんを含む新生物<腫瘍>と循環器系の疾患にかかる医療費が大きくなっていることがわかります。

医療保険の利用

病気別にどの程度の医療費が必要となるか、見当がつきましたか?仮に今必要となった時、十分な資金を用意できるでしょうか。

国による医療費補助を一般に公的医療保険と言いますが、公的医療保険以外に、民間の保険会社が提供する民間医療保険を利用する方法があります。

民間医療保険には様々な種類がありますが、終身医療保険、定期医療保険、貯蓄型医療保険、女性特化型医療保険、引受基準緩和型医療保険などが一般的です。

医療保険によって保障対象の疾病が異なり、保険金の支払額や入院時の支給額・支給期間も変わるのでご自身の保険料の許容範囲と比較しながら、保険の加入を検討しても良いでしょう。

また、上述の通り、先進医療費は高額になる可能性が高いので、先進医療にかかる特約付きの医療保険を選択することも選択肢の一つでしょう。

将来のリスクに備えて

いかがでしたか。

普段あまり意識しない医療費に関するリスクを認識したら、実際に公的医療保険の制度を詳しく調べたり、民間医療保険の利用を前向きに検討してみたりなど、行動に移してみましょう。

誰にでも病気になる可能性があり、発病後の対応が間に合わない事態にならないよう、ご自身と家族のためにも意識を高めていきましょう。

 

 

<執筆者>

三上 諒子(MILIZE提携FPサテライト株式会社所属FP)
大阪市立大学商学部学士課程修了。
学生時代にESG投資の有効性に関する研究を行う。
主にESG・サステナビリティ領域の業務に従事、現在は企業のサステナビリティ・ガバナンス構築に向け活動中。
地球のサステナビリティには最終的に消費者の力が必要と考え、消費者行動に影響を与えるファイナンシャルプランナーを目指す。

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