大きな声では聞けないけれど「円高・円安」ってどういうこと?―外国為替の基礎知識―

2024/02/19

ニュースやネット記事でよく目にする「円高・円安」という言葉。何となくわかっているような気がするけれど自信がない。でも、今さら聞くに聞けないという方が多いかもしれません。

自分は特に投資に興味があるわけでもないし、あまり関係ないと思っているあなた。実は円高や円安は、私たちの暮らしにも大きな影響があるのです。

まずは、円高・円安について簡単にご説明します。

円高・円安とは?

円高・円安とは、一言で言えば外国の通貨に対して日本の円の価値が高いか安いかということを表しています。つまり「いくらになったら円高で、この値段だから円安」というものではありません。

ニュースで取り上げられる外国為替相場の情報は、米ドルに対しての円の価値を表しているので、円高とはドルに対して円の価値が高いことを言い、円安とはドルに対して円の価値が低いことを言います。それが「円高ドル安」などと表現されているというわけです。

たとえば、1ドル=100円で円をドルに両替する場合を考えてみます。
この場合、100ドル=10,000円になります。

これが1ドル=150円になった場合、100ドル=15,000円で、同じ100ドルを手に入れるのに15,000円必要になります。これは円の価値が下がっているからで、これを「円安」といいます。

反対に1ドル=50円になった場合には、100ドル=5,000円なので、100ドルは5000円あれば手に入ることになります。円の価値が高くなっているので、これを「円高」といいます。
では、円高・円安はどんな理由で起こるのでしょうか。

なぜ、円高・円安になるのか?

円高・円安といった為替相場の動きは、刻々と変化しています。その要因は一つではありません。先ほどからお伝えしているように円高・円安とは外国の通貨に対する円の価値を表しているので、それぞれの国の経済状況や政治状況によっても変化します。

簡単に言うと、円を買いたいと思う人が増えると円の価値は上がる、つまり円高になり、円を必要とする人が減ると円の価値が下がり円安になります。

その要因の一つは、金利の状況です。

日本とアメリカの金利の違いで考えてみましょう。たとえば、アメリカの金利に比べて日本の金利が高ければ日本に投資したいと考える人が増え、ドルを売って円を買う動きが強まります。これが円高につながるのです。円安はその逆です。

話が少し難しくなってきましたが、為替の動きは複雑で、さまざまな要因が絡み合っていることを覚えておきましょう。

今の日本はどうなのか?

ここで現在の日本の状況を考えてみましょう。

2022年以降、日本では円安が進んでいます。これは、日本ではコロナ禍からの経済的な回復が諸外国に比べ遅れていることが原因の一つになっています。アメリカ経済が好調であることや、日本とアメリカの金利の差が大きくなることで、円を売ってドルを買う動きが増え、円安が進みます。

日本はエネルギー資源や大豆、小麦など食品の原材料となるものの多くを輸入に頼っています。原油価格の高騰は、ロシアによるウクライナへの侵攻の影響もあるかもしれませんが、現在の日本の物価の高騰は円安の影響を強く受けていると言えるでしょう。

次に、円高・円安のメリット・デメリットを説明します。

円高のメリット・デメリット

まずは、円高の場合のメリット・デメリットを見ていきましょう。

円高のメリット

円高になると、海外からの輸入品が安く手に入るようになります。日本のように原油や食料品などの多くを輸入に頼っている場合、私たち消費者にとってはメリットです。

これは企業にとっても同様で、原材料の多くを輸入している企業にとっては、原材料費や生産にかかわるコストが下がることで売り上げをアップさせることができます。

また海外旅行に行く場合、ドルが安く手に入るため行きやすくなり、現地での買い物もしやすくなるでしょう。海外旅行好きな方には、嬉しいことですね。

円高のデメリット

反対に海外での日本製品の値段が上がり、売れにくくなります。日本の輸出産業の柱である自動車などは、その影響を強く受けます。円高が長期化すると、景気の悪化を招くこともあります。

また円高による海外からの旅行客の減少も、日本経済にとってはデメリットと言えるでしょう。実際に、コロナ禍での外国人観光客の減少が日本の経済にも大きな影響を与えました。

世界でも有数の日本の自動車産業の低迷やインバウンド消費の低下は、日本の景気にも影響が出ます。円高は、どちらかというと個人より企業にダメージが大きいかもしれませんが、企業の業績が下がればそこで働く人々の賃金も下がる可能性がでてきます。賃金の低下は私たちにとっては直接影響がありますし、消費者が物を買わなくなるとさらに景気が悪化することにもなります。

円安のメリット・デメリット

次に、今の日本の状況である円安のメリット・デメリットについて見ていきましょう。

円安のメリット

円安になると海外で日本製品が安く売れるため、輸出産業が好調になります。輸出産業の代表である自動車業界はその影響を受け、引いては日本経済にも良い効果をもたらすことになるでしょう。

また、海外からの旅行者の増加も見込まれます。インバウンド消費の増加は、日本経済にもプラスの材料になります。今年に入り外国人観光客も増え、観光地の多くは盛り上がっている所が多くあります。

円安のデメリット

円安のデメリットは、輸入品の値段が上がることです。日本は、エネルギー資源や食料品の原材料である穀物の多くを輸入しています。このため、円安は私たちの生活に直接的な影響があります。

最近の物価の高騰は円安の影響を強く受けていて、原材料費の価格の上昇により食品や生活必需品の値上げが続いています。特に原油価格の高騰は、ガソリン代や電気代といった生活に大きな影響を与えるものの値上がりにつながるため、私たちの暮らしにとってはデメリットになります。

今の日本は、賃金は変わらないのに生活費だけが増え続けている状態、つまり実質的には賃金が下がっているのと同じような状況になっているのです。

円高と円安、どちらが良いのか?

では、円高と円安はどちらが良いのでしょうか。
これまで見てきたように、円高と円安は表裏一体であり、シーソーのような関係と言えます。それぞれの立場によりどちらが良いかは変わってきます。

海外旅行が好きな方にとっては円高は嬉しいことですが、観光地で働く方にとっては円高はマイナスです。円高になれば海外で自動車は売れなくなりますが、海外の工場で商品を作って輸入している日本企業にとっては円高は追い風になります。どちらが良いかは一概には言えないというのが本当のところです。

ただし、私たち消費者の視点で見た場合にもっとも影響を受けるのは円安です。物価の高騰は少しずつ私たちの生活に悪影響を及ぼします。自分には関係ないと考えるのではなく、今の日本の経済状況に目を向けることが大切です。

暮らしへの影響を考える

円高・円安は、投資に興味のない人にとってはあまり関係ないと考えられている方も多いと思いますが、実は私たちの暮らしにも影響があります。

今の日本の物価高騰が円安の影響を受けていることがわかると、今後どうなっていくのかが気になりますし、円高・円安が自分たちの暮らしに直接影響があると思えば、少しだけ興味を持てるようになるのではないでしょうか。

難しいという先入観を捨てて、まずは毎日のちょっとした経済のニュースを気にしてチェックし、自分たちの暮らしにどんな影響があるか考えてみてはいかがでしょうか。

執筆者情報

保泉 美砂子(MILIZE提携FPサテライト株式会社所属FP)
FPサテライト所属ファイナンシャルプランナー
長く教材制作会社にて、校正や原稿作成など、お金とはほとんど縁のない世界で仕事をしていたが、数年後にやってくる夫の定年退職を機に、一念発起。二人の子供たちに背中を押され、FP資格取得に向けて勉強を開始し、無事合格を果たすことができた。
FPとしてのステップアップを目指そうと考えていたところに、FPSの求人と出会い、即応募。そして、現在に至る。

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