住宅ローン金利が上がるとどうなる?影響を徹底シミュレーション

2024/11/08

2024年3月にマイナス金利政策が解除され、金融機関が扱う預貯金の金利がわずかに上昇しました。今後は借入金の金利も上がる可能性があります。

金利上昇の中でも住宅ローンは、家計に影響の大きいものの1つです。借入額が大きいため、利息の増え方が大きくなります。また、返済期間が長く、家計への影響が長期に渡るという特徴もあります。

この記事では、住宅ローンの金利上昇が家計に及ぼす影響を解説していきます。

住宅ローン返済の金利上昇による影響は?

金利が上がると、借入額が同じでも、利息が増えることにより返済総額が増えます。例えば、返済期間35年の住宅ローンで3,000万円の借入を検討しているとします。同じ借入額でも、金利が1.5%と2.5%では返済総額に次のような違いがあります。

表1 金利の違いによる返済額の差

金利 毎月の返済額 総返済額
1.5% 9万2,000円 3,858万円
2.5% 10万8,000円 4,505万円

住宅金融支援機構フラット35 「ローンシミュレーション」を使用しFPサテライト(株)にて試算

なお、ここでは計算を単純化するために、35年間金利が一定、ボーナス払いもないことを想定しています。

この例では、金利が1.0%上昇したことで、毎月の返済額は1万6,000円、総返済額は647万円の差が生じました。毎月1万6,000円の差は、家計への影響が大きいのではないでしょうか。また、総額の差も大きく、ライフプランに影響があるかもしれません。

なお、住宅ローン返済中の場合、契約時の金利選択によって次のような違いがあります。

固定金利(全期間固定型)の場合

契約時から完済まで金利が固定される契約です。この場合は、返済中に金利が上がっても返済額に変化はありません。毎月の返済額も総返済額も当初契約した金額と変わりません。

〇年固定(当初固定期間選択型)の場合

契約時から一定期間金利が固定されている契約で、「〇」で表している固定期間は3年・5年・10年など、契約によって決まります。

○年固定は、その期間が終わるまで金利が変わっても返済額は一定です。固定期間が終わった時点で金利が見直されるため、新しい金利が以前よりも高いと、住宅ローンの金利も高くなります。

住宅ローンは借入残高と金利で利息の計算をしますので、金利が上がると利息が増え、結果として返済額が増えます。

変動金利の場合

変動金利は、市場を参考に金利が変わる契約です。変動金利の場合は、半年ごとに金利の見直しがあり、市場の金利の動きが住宅ローンの金利に反映されます。○年固定同様、金利が上がると利息が増え、返済額が増えます。

ただし、毎月一定額を返済していく「元利均等返済」では、金利が変わっても毎月の返済額の見直しは5年ごとが一般的です。これは、「5年ルール」と呼ばれ、毎月の返済額が5年間一定額になります。

また、返済額見直しの時も、返済額が急激に増えることを避けるため、新しい返済額をそれまでの支払額の125%以下にする「125%ルール」 があります。

しかし、「5年ルール」も「125%」ルールも、毎月の返済額が急に増えないというだけで、金利が上がれば利息が増え、総返済額が増えます。また、毎月の返済では、利息を優先的に支払うことになっています。そのため、金利が上がると返済額の中の借入残高分が減ってしまい、借入残高が減りにくくなるケースも想定されます。

毎月の返済額の内訳と、各種ルールが適用された場合について、図を用いて比較してみましょう。

図1金利が変わったことによる借入残高返済分への影響

毎月の返済額は、借入残高分と利息分に分かれます。もし、利息が大きくなり、各種ルールが適用される状況になった場合、返済額の借入残高分の支払額が減ってしまいます。図1の左側のように借入残高分と利息分の合算を支払っていたものが、右側のように支払額の中で借入残高分が減ってしまうのです。

このような状況が続くと、契約時の計画より借入残高が残ってしまい、返済期間が終わっても借入金が残ってしまう恐れがあります。借入金が残っている場合は、返済期間が終わるタイミングで、一括返金を求められる場合があります。

なお、借入金を一定額返済していく「元金均等返済」の場合は5%ルールも125%ルールも適用されません。

変動金利の返済額はどのくらい変わる?

では、金利が上がると毎月の返済額や総返済額がどのくらい変わるのか、見てみましょう。

ここでは、3,000万円を変動金利(契約時の金利1.8%)、35年ローンで借りた場合を例に計算してみます。なお、計算を単純化するために、金利見直しのタイミングで金利が変わることとします。

返済額シミュレーション

金利が1.8%から変わらない場合と、契約5年後に金が2.0%、2.3%、2.8%に変わった場合の月額返済額と総返済額を試算すると次のようなります。

表2 契約5年後に金利が上がった場合の返済額予測

金利 毎月の返済額 総返済額
1.8% 9万7,000円 4,046万円
2.0% 9万9,000円 4,146万円
2.3% 10万4,000円 4,292万円
2.8% 10万6,000円 4,392万円

住宅金融支援機構フラット35 「ローンシミュレーション」を使用しFPサテライト(株)にて試算

今回の例では、金利が2.0%に上がると、月額返済額では2,000円の差ですが、総返済額で比較すると100万円の差になりました。毎月の差は小さくても、長い期間続くとトータルで大きな差になることがわかります。

また、2.8%では、月額約1万円、総返済額約346万円の差です。金利が上がった分、返済額の増額分も大きくなっています。

ただし、実際の住宅ローン返済では、金利が変わる頻度が高いケースもあり、例のように単純に計算はできません。この金額は返済額の変化の目安としてお考え下さい。

5年ルールや125%ルールの影響

表の例は、返済額見直しのタイミングで金利が上がったケースでした。では、5年ルールや125%ルールが適用された場合、返済額への影響はどのようなものがあるか、検討してみましょう。

125%ルールが適用される場合を例に解説します。

今回の例では、毎月の返済額の125%である12万1,250円を超えると、125%ルールが適用されます。仮に金利見直して金利が3.8%になったとしましょう。この場合、金利から計算した返済額は毎月12万5,000円になりますが、負担額は12万1,250円に据え置かれます。単純な差額でも返済額が3,750円足りないのです。

結果として、借入金残高分の支払額が少なくなり、借入残高が多く残ることになります。5年ルールで返済額が据え置かれた場合も、同様に借入残高が多く残ります。そして、借入残高が多いと利息が大きく算出され、支払額が増えます。

金利上昇で返済に困ったときの対処法は?

金利が上昇しても、返済額の増額が小さければ、家計の見直しで返済を続けることができるかもしれません。また、世帯収入を上げることができれば、返済額が増えても家計に影響が少ないかもしれません。

しかし、住宅ローンが家計を圧迫するようであれば、何らかの対策を取らなければなりません。まずは、借入れた銀行に相談してみましょう。条件によっては返済期間の延長などにより、毎月の返済額を抑えられる可能性があります。

住宅ローンの金利上昇で返済計画の見直しが必要になる場合も

金利が変わると利子や利息が増えるため、預貯金で資産が増えやすくなる一方、借入金の返済額が増えます。特に住宅ローンは借入額が大きく、返済期間も長いので、長期に渡って影響を及ぼす可能性があります。

特に変動金利は返済中に金利の見直しがあり、返済額が変わる場合があります。金利が大きく変わる場合は、ライフプランの見直しや、返済計画の変更も視野に入れる必要があるかもしれません。

執筆者情報

黒川 一美(MILIZE提携FPサテライト株式会社所属FP)

大学院修了後、IT業界でセールスエンジニア・営業企画として働き、出産を機に退職。
家計を守る立場になり、お金との向き合い方を見つけるためFP資格を取得。
現在は独立系FP法人であるFPサテライト株式会社所属FPとして活動中。
3人の子育て中の母でもある。

友だち追加

© 2024 マネニュー