パートやアルバイトで働いていると、「103万円の壁」という言葉を耳にすることがあるでしょう。この「103万円の壁」にはどのような意味があり、超えるとどうなるかご存知でしょうか?
103万円の壁を超えることは、パートやアルバイトで働いている本人だけではなく、家族にも影響がある場合があります。この記事では、「103万円の壁」を気にしながら働くパートの田中さんと、「103万円の壁」の存在を知らなかったアルバイトの佐々木君の会話をベースに、よくある疑問を解説していきます。
103万円の壁とは?

このままだと、「103万円の壁」を超えそうだから、調整したかったの。
でも、103万円の壁ってなんですか?


パートやアルバイトでも税金を納めるんですか?


だからパートの時間を調整しているの。
103万円の壁は所得税がかからないボーダーライン
現在の税制では、収入から必要経費などを引いた金額をもとに納税額が決まります。「細かいことはいいから、結論だけ知りたい」という人は、「パートやアルバイトの年収が103万円を超えると所得税がかかるかもしれない」ということを覚えておいてください。
なお、「所得税がかかる」と断言していないのは、年収が103万円でも、状況によって所得税がかからない人もいるからです。次の章から詳しく解説していきます。
どうして「103万円」?

正社員だともっと高い、とかあるんでしょうか?


来年から気を付けます。
103万円の計算方法は?
所得税は、1年間の収入から、出費の一部を引いた金額にかかります。収入から引ける最少額が103万円で、これより年収が低ければ所得税はかかりません。
所得税の計算方法と共に、103万円の計算方法を解説します。
所得税を求めるときに、収入から引けるのは、仕事に必要な出費や、法律で決められた項目です。法律で決められた項目は「控除」といい、払込保険料やiDeCoの拠出金などで、15の項目に分類されます。
所得税の計算方法の概略図は次のようになります。
図1 所得税の求め方の概略図
国税庁HP 所得税のしくみをもとに執筆者作成
ここで、収入から引ける金額が最も少ないのは、次のケースです。
給与所得控除:55万円
所得からの控除額(基礎控除):48万円
この場合を概略図で表すと、次のようになります。
図2 年収103万円の場合の所得税計算概略図
年収から引ける合計が103万円ですから、年収103万円以下の場合、課税所得は残りません。なお、基礎控除以外の控除が適用される人は、控除額が増える分、税金がかからない年収は103万円より高くなります。
個人事業主は要注意
個人事業主の場合は、仕事に必要な出費は実際に支払った金額です。そのため、この出費が55万円より少ない場合は、収入が103万円より低くても、所得税がかかる場合があります。個人事業主の場合は、年収で所得税がかかるかどうか判断できないため、所得が48万円を超えるかどうかで判断します。
なお、パートやアルバイトで働いていると思っていても、登録制などの場合は個人事業主になっている可能性があります。パート感覚で保険の営業やポスティング、アルバイト感覚で家庭教師などをしている人は、個人事業主として契約している場合があります。契約の際にしっかり確認しておきましょう。
103万円の壁を超えるとどうなる?

なんだか、手続きも大変そうですし、税金を払えるか不安ですよ。
それなら、税金の手続きは、会社がやってくれるよ。
源泉徴収で引かれた分から納めるから、追加で納めることはあまりないと思う。


来年は稼ぐぞ!
ご両親にも影響があるから、103万円超えていいか確認した方がいいよ。

103万円の壁を超えた場合の影響①:働いた人に所得税がかかる
所得税は、前章の通り課税所得に応じて納税額が決まります。また、前章の通り、働き方や、控除によって、所得税がかかるボーダーラインが103万円にならない人もいます。そのため、ここからは、所得税がかかるボーダーラインを「103万円の壁」と呼んでいきます。
前章でも触れましたが、103万円の壁を超える影響で有名なものは、所得税を納めるようになることです。また、所得税を納める人は、一般的に住民税も課税対象になります。所得税と住民税の納税額分、自由に使えるお金が減ることになります。
なお、パート・アルバイト先が1社の場合は、会社が納税手続きをしてくれる場合もあります。自分で納税手続きをする場合は、翌年の2月16日から3月15日の間に確定申告を行います。
103万の壁を超えた場合の影響②:扶養者に扶養控除が適用されなくなる
パートやアルバイトで働いている人は、配偶者や両親などの扶養に入っている人が多いのではないでしょうか?その場合、扶養している人(以降、扶養者)の所得税を決めるときの控除に影響があります。
扶養者には、「扶養控除」や「配偶者控除」が適用されます。しかし、103万円の壁を超えると、「扶養控除」や「配偶者控除」が適用されなくなります。配偶者は、「配偶者特別控除」が適用されますが、配偶者の年収が増えるに従い、控除額は徐々に減っていきます。つまり、扶養者の所得税納税額が増えるのです。
また、企業によっては扶養家族がいる場合に手当が支給される場合もあります。企業によって支給条件が変わりますが、103万円の壁を超えないことが条件の場合、手当を受取れなくなってしまいます。
103万円の壁を超えて働きたい場合は、家族で話し合いを

知れてよかったです。
でも、ご両親がどう考えているか確認するのも大切だよね。知らずに扶養控除適用して申告しちゃうと、納税額が少なくてペナルティがかかるかもしれないから。


ほんと、今知れてよかったです!早速次の休みに親と話してきます!
執筆者情報
黒川 一美(MILIZE提携FPサテライト株式会社所属FP)
大学院修了後、IT業界でセールスエンジニア・営業企画として働き、出産を機に退職。
家計を守る立場になり、お金との向き合い方を見つけるためFP資格を取得。
現在は独立系FP法人であるFPサテライト株式会社所属FPとして活動中。
3人の子育て中の母でもある。