【運用】あのユーラシア・グループのトップ10リスク発表 今年のリスクは去年とどう違う?

2021/08/19

世界各国・地域の政治的変動が市場に与える影響など地政学的リスク分析を専門とするコンサルティング会社のユーラシア・グループ(eurasia group)による、恒例の2015年世界トップ10リスクが公表されました。

 

2015年の国際情勢の10大リスクを昨年(2014年1月発表)と比べて見てみましょう。

原文についてはユーラシア・グループのWEBサイトをご覧ください。

Thumbnail TopRisk

 

 

2014年、2015年 国際情勢の10大リスク


ユーラシア・グループによる2015年、そして前年の国際情勢10大リスクをまず一覧でみてみましょう。

 

【2015年国際情勢の10大リスク】

1 ヨーロッパの政治 The Politics of Europe
2 ロシア Russia
3 中国経済圏減速の影響 The Effects of China Slowdown
4 金融の兵器化 Weaponization of Finance
5 イスラム国 ISIS, Beyond Iraq and Syria
6 弱い現職指導者 Weak Incumbents
7 戦略部門の台頭 The Rise of Strategic Sectors
8 サウジアラビア対イラン Saudi Arabia vs. Iran
9 中国と台湾 Taiwan/China
10 トルコ Turkey

(注)ユーラシア・グループHPより。英文は原文、日本語はシミュライズ作成

 

【2014年国際情勢の10大リスク】

1 難局にたつ米国の同盟関係 America's troubled alliances
2 新興国の多様化 Diverging markets
3 新しい中国 The new China
4 イラン Iran
5 産油国 Petrostates
6 戦略的データ Strategic data
7 アルカイダ2.0 Al Qaeda 2.0
8 中東の動揺の広がり The Middle East's expanding unrest
9 気まぐれなクレムリン The capricious Kremlin
10 トルコ Turkey

 (注)ユーラシア・グループHPより。英文は原文、日本語はシミュライズ作成

 

2015年 国際情勢の10大リスクの概要


ユーラシア・グループは、2015年の国際情勢の全体感として次のように見ています。

 

現在は、世界のさまざまな場面で政治的対立が冷戦以来もっとも大きくなってきいる状態。アメリカとロシアの関係は完全に壊れ、中国は独自路線を取っている。ヨーロッパ諸国の結びつきも色々な面でほころびをみせている。アラブ諸国、ブラジル、インドなどもそれぞれ異なる方向へ動いている。

 

更に、アメリカがより内向きになっていることがグローバルな地政学的リスクを高めている。2015年はアメリカが引続きリスク回避的な動きを続ける可能性が高く、2014年よりも地政学的な問題が起こりやすくなる。

 

続いて、2015年の国際情勢10大リスクについてもう少し細かく見てみましょう。

 

1) ヨーロッパの政治
ヨーロッパ経済はユーロ債務危機のときと比べると遥かによい状態になっているが、政治面はより悪化。草の根的な政治活動がヨーロッパ全土で広がっていて、ギリシャやスペインを始めフランスや英国でも見られる。EU内、特に協力してリーダーシップを発揮すべきドイツ、フランス、英国の溝が深まっている。さらに、ロシア危機により高まる安全保障リスク、イスラム教徒からのテロ脅威などEU外からのリスクも高まっている。

 

2) ロシア
ウクライナを通じたロシアと西側諸国の対立は、ロシアの政治にかなり強い反西側諸国的な側面をもたらしている。西側による制裁、原油価格の下落、ルーブル通貨の下落は、経済、財政的にロシアを弱らせており、孤立したロシアは大きなリスク要因となる。

 

3) 中国経済圏減速の影響
習近平氏は権力をしっかりと掌握しており、中国自体に関しては楽観できる。ただし、ブラジル、オーストラリア、インドネシア、タイなど、中国への輸出に依存している各国にはリスクがある。中国経済の減速、これまでの高成長経済からの変化にしっかり対処する必要がある。

 

4) 金融の兵器化
世界大戦以降、アメリカのグローバル優位性は、米国主導のNATOなどの同盟や、IMF、世界銀行などの国際機関によって米国基準のルールが推し進められたことで保たれてきた。引続きオバマ政権は、従来の兵器等ではなく、金融や資本市場を用いて影響力を高めようとしている。金融取引の捕捉や資本市場へのアクセス遮断などを通じて相手国に対応をする能力を持っており、相手国にとっては大きなダメージとなり得る。

 

5) イスラム国 
イスラム国(ISIS)の軍事力は強大で、その思想はその中心地のイラクとシリアから、他の中東諸国、北アフリカに広がりを見せている。新勢力を呼び込むためにその魅力をアピールし続けなければならず、活動が活発化している。スンニ派の国はテロ対象のリスクが高まり、アラブ首長国連邦、エジプト、ヨルダンなどで、金融、観光産業に大きなリスクとなる。

 

6) 弱い現職指導者
低成長と民衆のさまざまな要求の高まりがあったにもかかわらず、インドとインドネシアを除き、多くの新興国の2014年の選挙で現職政権が再選された。ただし、民衆の不満は高まっており、弱まった現職指導者には、今後の外部環境や国内問題に対応していくにあたり、難し舵取りが求められる。2015年は、インドとインドネシアを除いて、ブラジル、コロンビア、南アフリカ、トルコ、ナイジェリアなど重要な新興国における、弱体化した現職指導者が世界経済の成長、および政治的安定に大きなリスクとなる。

 

7) 戦略部門の台頭
これまでの過去数十年間、多国籍企業は自国および活動国双方の政府から大きな自治権を獲得し、グローバルにものやサービスを提供してきた。2015年は政府の影響力が増し、ビジネスの成否はより政府の方針に影響を受けるようになる。国や自治体は、政治的目標と調和する企業を後押しし、そうでないものを罰する方向になり、グローバル企業に影響がおよぶリスクがある。

 

8) サウジアラビア対イラン
サウジアラビアとイラン間の緊張はよりいっそう高まり、地域全体のスンニ派とシーア派の亀裂を更に深める。派閥間の代理戦争の増加、双方の内政状況、イランの核開発計画の展開などが両国間の緊張を高めていく。

 

9) 中国と台湾
11月の台湾地方選挙における野党の民主進歩党による圧勝を受けて、中国と台湾の関係は2015年に急速に悪化する。2016年の選挙を前に馬英九総統は既にレームダック状態であり、中国との貿易自由化の進展は全く進まない。中国が、台湾の再統一という最終目標達成のために経済面の進展が役に立たないと判断した場合には、すでに合意している貿易・投資協定をないがしろにする可能性がある。

 

10) トルコ
石油価格の下落はトルコにとって良ニュースだったが、良いことはそれくらいしかない。高圧的な政策、近視眼的な政治決断、誤った外交政策は全てトルコにとってネガティブ要因。

 

 

 

 

2015年の10大リスクを2014年と対比させてみてみると、目新しいものとしては、3位の「中国経済圏減速による新興国への影響」、5位の「イスラム国」のリスク、7位の「国家による戦略部門の台頭」リスク、などがあげられます。

 

6位の「新興国における弱い現職指導者」は前年2位の「新興国の多様化」の流れを汲むもの、8位の「サウジアラビア対イラン」は、前年4位の「イラン」、8位の「中東の動揺拡大」などの流れを汲むリスクといえるのではないでしょうか。

 

また、4位の「金融の兵器化」および9位の「中国と台湾」における米国や中国は、前年ともに異なる視点でのリスク要因として取り上げられていました。1位の「ヨーロッパの政治」についても、一昨年、違った形でのリスク要因として取り上げられています。

 

2位の「ロシア」、10位の「トルコ」については昨年の流れを受けたリスク要因といえるでしょう。

 

 

(注意) 本記事ではユーラシア・グループのHPに公表された意見を、参考となるよう意訳・要約しお伝えしているもので、その正確性については何ら保障するものではありません。 また、ここでのご説明は投資に関する一般理解のみを目的としているものであり、投資アドバイスに代わるものではありません。投資商品の価額や投資から得られる収益は変動する可能性があり、投資元金を割り込む可能性があります。 全ての投資判断は100%ご自身の責任において行ってくださいますようお願いします。

 

 

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