【景気】アベノミクスで予想しなかった事態 想定外・想定内 政策にもリスク管理の時代
アベノミクスの基本的な流れは以下のような順に物事が起こるシナリオを想定していた。
これらのシナリオが最初のうちは非常に上手く行き、長い政権を巧みに作り上げることに成功したかのように思えた。
しかしそのシナリオにやや狂いが生じてきている。
すべってのイベントを踏まえた上で、何回もシミュレーションして、いくつもの成功への道を描いたはずだが、そう簡単にはいかないようだ。

アベノミクスシナリオ
これらの事象がアベノミクスの想定したイベントで順序はやや入れ替わっても、このような現象が生じて、正の連鎖が生じて、一気に20年の停滞を抜け出し、再度成長を取り戻すというものであったはず。
- デフレの脱却のための極端な金融緩和
- 日銀のゼロ金利政策、国債等の買入
- 円安と輸出の伸び
- 企業業績の回復
- 株価上昇
- 資産効果⇒贅沢品等の消費回復
- 消費税を5%から8%へ
- 物価の上昇
- 企業への賃金上昇要請
- 賃金の伸び
- 消費の成長⇒普通の商品の消費回復
- 景気の回復、納税額の回復
- 国債発行の減少
- 規制改革・医療・農業・ロボット等への積極的投資
- 地方・中小企業への景気拡大継続
- 女性の労働力の活用による労働人口確保
- 消費税の影響を吸収し消費回復
- 実質賃金の上昇も加速
- 消費税の再度上げ 8%から10%へ
- 物価上昇2%達成
- 地方・中小企業での景気回復実感
- 統一地方選でのさらなる信任
- 規制改革、TPP成立、国内外での消費が上昇し、成長路線定着
実現に向けて起こる可能性のある障害・イベント
想定していたイベントや障害と想定していなかったイベントが起こってきている。これらのイベントをどこまで想定して政策を実施しているかで将来の成功度合に大きな影響がある。
政権にとっての最大のリスクは
いまのところ
- スキャンダル(第一次阿部政権の時の失敗の再来)
- 海外も含めた天災(エボラ・台風・地震・噴火・津波)
- 米国の意外な回復鈍化
が一番大きなイベントで、すでにリスクの状態を過ぎて、現実となってきている。これらにいかにフォワードルッキングに、かつ迅速に対応するかが大切である。
他のリスクや事象は以下のようなものである。
【想定内】
- 中国や韓国との摩擦
- 中国や新興国の成長鈍化
- 輸入品の価格上昇による物価上昇
- 原子力発電の停止によるエネルギー費用の上昇
- 電気代・原料費の上昇による中小企業負担の上昇
- 低金利状態の継続
【想定外】
- 賃金上昇が思ったように上がらない。
- 物価が予想外に広範に上昇
- エボラ熱による恐怖の拡大
- ウクライナ独立・香港デモ・イスラム国拡大
- 女性閣僚の失敗・お金と政治の再燃
- 株価の上昇が長く続かない
一番アベノミクスで気になる数字
米国の景気動向、ユーロの回復、中国や新興国の成長等海外の事情はコントロールできないもので、起こったとしてもやむを得ない面が強い。
政府や官僚としては、企業の業績や企業関連の景気指標も大事であるが、より気になる数字は、
実質賃金と個人消費であろう。
個人消費については以下の記事を参照いただきたい。曇りの状態が深まっている。
【景気】【支出】百貨店・コンビニ・スーパーの消費はマイナスが総じて継続 消費のこの状況はアベノミクス想定内か?
政権にとって個人の生活や家計が改善しないと、選挙で勝って次期の政権を継続することが難しくなる。
大臣のスキャンダルでかなり信頼度を落とした政権は、経済重視で実績を積み上げて名誉挽回といきたいと考えているようだ。
今後の政権運営には経済の目に見える、感じられる経済回復が必要である。
【実質賃金指数の推移】
上記を見ると実質賃金(指数)は依然としてマイナスから抜け出ることができない。そのマイナスも改善の兆しもあまり見えていない。
物価は少しづつ上昇を始めており、円安による輸入品の価格上昇も伴って、上昇基調が出てきている。
しかし、賃金については、政府の必死のお願いで、ボーナスや一時金でのアップは行われたが、大企業でのベアの広がりや、中小企業への拡大はまだ本格化しない。
実質賃金指数(青の実線)は減少傾向が確実に進行しており、8月の時点で前年対比では給与総額で-3.1%の減少、基本給部分では-3.6%と悪化している。(いずれも確定値)
当面はこの個人消費・実質賃金の改善と、個々の企業業績に最大の政権リスクが潜んでいるように思う。
給与の一段の上昇を支えるだけの、企業の収益力の強化(法人税減税と円安路線の安定的な継続)がまずは第一関門だ。
景気が曇りのち雨から晴れになるには、多くの企業で業績アップ ⇒ 設備投資の増加&賃金の上昇 というラインの実現が一番大事なシナリオとなる。
