上場企業の2014年3月末の決算情報を用いた、主要業種の生涯給与ランキング・アップデート記事も残り数業種です。 今回は、自社製品をグローバルに展開する企業も非常に多く、経済情勢を受けて増収増益企業も多い機械業界です。
ここでは、全企業の生涯給与ランキング、各社業績情報のアップデート、更に、財務データからみえる将来の給与動向を展望してみたいと思います。
なお、他業界の生涯給与ランキング2014についてはこちらをどうぞ。
2014生涯給与ランキング — 機械業界
順位 | 銘柄 コード |
会社名 | 生涯給与 (億円) |
30歳給与 (万円) |
40歳給与 (万円) |
平均 年齢 |
平均給与 (万円) |
1 | 6460 | セガサミーホールディングス | 3.36 | 740 | 919 | 38.5 | 891 |
2 | 6269 | 三井海洋開発 | 3.29 | 725 | 901 | 39.4 | 890 |
3 | 6370 | 栗田工業 | 3.05 | 671 | 834 | 40.8 | 848 |
4 | 7011 | 三菱重工業 | 2.90 | 639 | 793 | 38.7 | 772 |
5 | 6403 | 水道機工 | 2.84 | 626 | 778 | 43.0 | 823 |
6 | 6309 | 巴工業 | 2.83 | 624 | 775 | 39.8 | 772 |
7 | 6256 | ニューフレアテクノロジー | 2.74 | 604 | 750 | 42.1 | 784 |
8 | 6324 | ハーモニック・ドライブ・システムズ | 2.73 | 602 | 748 | 41.2 | 767 |
9 | 6326 | クボタ | 2.72 | 616 | 756 | 40.4 | 762 |
10 | 6141 | DMG森精機 | 2.71 | 597 | 742 | 37.9 | 710 |
11 | 6302 | 住友重機械工業 | 2.67 | 588 | 731 | 43.6 | 780 |
12 | 6412 | 平和 | 2.67 | 588 | 730 | 38.5 | 707 |
13 | 6257 | 藤商事 | 2.66 | 586 | 727 | 36.8 | 680 |
14 | 6301 | 小松製作所 | 2.65 | 585 | 726 | 38.0 | 696 |
15 | 6486 | イーグル工業 | 2.64 | 582 | 723 | 40.3 | 727 |
(注1) 生涯給与、40歳給与は、各社の有価証券届出書データを用い、シミュライズ給与カーブモデルによる推計値
(注2) 平均年齢、平均年収は企業による公表値
(注3) 前年変化は、生涯給与の前年度推計値からの変化
(注4) 業種の分類は東証分類によるものの一部弊社独自の分類を加味。なお、平均給与を公表していない企業、従業員数が少ない企業等を除く
ランキング上位3社は前年と同じ顔ぶれで、トップはパチスロ大手のサミーやアミューズメント機器・施設運営のセガを傘下にもつセガサミーホールディングス(株)、2位は原油生産貯蔵設備の設計・建造の三井海洋開発(株)、3位に総合水処理の最大手の栗田工業(株)が入っています。 特にセガサミーホールディングス(株)と三井海洋開発(株)は売上高が前年比数十パーセント、経常利益は7~9割増となっているにもかかわらず、いずれも3億円台の生涯給与は前年とそう変わらない水準です。
その他ランキング上位には、三菱重工業(株)や住友重機械工業(株)の総合重機、半導体製造装置の(株)ニューフレアテクノロジー、NC旋盤のDMG森精機(株)などグローバルに大きく展開する企業など、また、(株)藤商事、(株)平和のパチンコ・パチスロメーカーなどが入っています。 中でも今回15位以内に入り目立っているのが、ともにグローバルにも強みを発揮している9位の農業機械国内トップ(株)クボタと、14位の建設機械世界2位(株)小松製作所。 これら上位企業もパチンコメーカーおよび一部企業を除き大幅な増益企業が多いものの、生涯給与は前年比数パーセントの伸びに留まっているのが特徴です。
ランキング各社の業績まとめ (連結ベース)
銘柄 コード |
会社名 | 経常利益 (億円) |
前年 変化 |
純利益 (億円) |
前年 変化 |
ROE |
6460 | セガサミーホールディングス | 3,780 | 17.6% | 405 | 93.8% | 9.0% |
6269 | 三井海洋開発 | 2,544 | 36.1% | 158 | 70.2% | 7.0% |
6370 | 栗田工業 | 1,781 | -1.1% | 161 | -27.1% | 4.3% |
7011 | 三菱重工業 | 1,832 | 22.9% | 1,604 | 64.8% | 10.4% |
6403 | 水道機工 | 161 | -0.9% | 11 | -21.2% | 7.9% |
6309 | 巴工業 | 17 | -35.5% | 8 | -48.0% | 3.6% |
6256 | ニューフレアテクノロジー | 444 | 22.0% | 177 | 18.0% | 32.0% |
6324 | ハーモニック・ドライブ・システムズ | 211 | 16.3% | 48 | 34.9% | 10.2% |
6326 | クボタ | 2,113 | 66.1% | 1,317 | 68.7% | 14.0% |
6141 | DMG森精機 | 1,607 | 8.2% | 112 | 124.7% | 7.4% |
6302 | 住友重機械工業 | 6,153 | 5.0% | 330 | 6.5% | 5.5% |
6412 | 平和 | 1,816 | 2.5% | 354 | -0.5% | 14.3% |
6257 | 藤商事 | 43 | -32.6% | 27 | -12.4% | 5.7% |
6301 | 小松製作所 | 2,421 | 18.3% | 1,595 | 26.3% | 11.6% |
6486 | イーグル工業 | 1,247 | 21.3% | 145 | 62.6% | 13.4% |
(注1) 連結ベース。有価証券報告書等を基にシミュライズ作成
続いて、企業の直近年度の財務情報を用いて今後の給与動向を探れるよう、いくつかの財務データを見ていきたいと思います。ここで取り上げる指標は以下になります。
① 配当性向 | 当期純利益に対して配当金支払額の占める割合。 利益をどれだけ株主に配当しているかを示す |
② ROE | 当期純利益を純資産合計で割った指数。投下資本に対して企業の稼ぐ力を示す総合的な指数といえる |
③ 経常利益(従業員一人当たり) | 経常利益を従業員数で割った数値 |
④ 純資産額(従業員一人当たり) | 純資産額を従業員数で割った数値 |
⑤ 現金等(従業員一人当たり) | 現預金(同等物も含む)を従業員数で割った数値 |
ランキング各社の配当性向・ROE・従業員一人当り財務データまとめ (平均給与公表企業単独決算ベース)
銘柄 コード |
会社名 | 配当性向 | ROE | 経常利益 (一人当たり) |
純資産額 (一人当たり) |
現金等 (一人当たり) |
6460 | セガサミーホールディングス | 64.1% | 4.4% | 87.9 | 2,908.3 | 62.1 |
6269 | 三井海洋開発 | 33.6% | 7.8% | 62.4 | 371.3 | 38.4 |
6370 | 栗田工業 | 59.7% | 4.6% | 8.8 | 126.1 | 23.2 |
7011 | 三菱重工業 | 153.2% | 1.5% | 4.9 | 54.2 | 17.2 |
6403 | 水道機工 | 23.8% | 9.2% | 5.9 | 38.8 | 12.1 |
6309 | 巴工業 | 50.7% | 4.1% | 5.2 | 60.7 | 14.6 |
6256 | ニューフレアテクノロジー | 10.3% | 37.4% | 34.1 | 70.8 | 0.6 |
6324 | ハーモニック・ドライブ・システムズ | 31.7% | 11.1% | 17.1 | 104.1 | 24.0 |
6326 | クボタ | 52.9% | 13.3% | 9.6 | 50.2 | 3.1 |
6141 | DMG森精機 | 39.4% | 5.4% | 4.5 | 64.2 | 6.7 |
6302 | 住友重機械工業 | 37.9% | 8.2% | 4.2 | 55.2 | 13.9 |
6412 | 平和 | 32.0% | 11.6% | 30.9 | 179.3 | 77.7 |
6257 | 藤商事 | 45.4% | 5.9% | 10.0 | 110.3 | 63.0 |
6301 | 小松製作所 | 41.3% | 21.1% | 15.7 | 66.9 | 10.6 |
6486 | イーグル工業 | 33.1% | 9.7% | 6.7 | 42.7 | 6.6 |
(注)金額は百万円
ROEは企業の投下資本に対する総合的な稼ぐ力、 配当性向は企業の株主への利益還元姿勢を示します。 ROEが一定水準以上あり配当性向の高い企業は、今後も資本効率よく収益を稼ぎながら従業員への還元も続けて行く可能性が相対的に高いと考えられます。上記表より、ROEが一定水準あり、配当性向が相応に高い企業として、(株)ハーモニック・ドライブ・システムズ、(株)クボタ、(株)小松製作所、(株)平和があげられます。 (株)ハーモニック・ドライブ・システムズは産業用ロボットに使用される精密減速機が主力の企業です。
この中で、従業員一人当たりでみた経常利益や純資産額が業界内の平均水準より高く効率的な経営を続けていると想定され、同時に、従業員一人当たりの現金額も相対的に多い企業として、(株)ハーモニック・ドライブ・システムズと(株)平和が今後の給与伸びの余地が他社対比あるのではないかと考えられます。
シミュライズでは引続き、企業の給与動向を見ていきたいと思います。
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