今月に入り、やや株式市場にも調整が入り、やや市場全体が動いてきた感のある市場であるが、前月までの市場金利の動きを見ておこう。
米国の週末の指標も強かったことから、米国では金融緩和も出口戦略の時を探る展開であるが、
日本はまだ金融緩和まっただ中で、 景気もやや曇りがちになってきた。
追加緩和が必要という展開だが、金利はすでに歴史的に低く、10年債の利回りも0.5%近くまで来ている。
今日はやや長めのヒストリカルデータを見ておこう。
財務省や日銀のサイトで長期の債券の利回りデータが提供されているので要チェック。
【国債利回りの変化】
上記は昭和49年からの国債の利回りの変化を見てみた。水色が1年物の国債の利回り、紺が5年物だ。
債券の利回りとは何か?
利子に、額面金額と購入価格の差額を加えたものが収益になる。
この収益を1年当たりの金額に換算し、購入価格(投資元本)で割ったものを利回りという。
債券投資をする際の指標として使われる。利回りが低いと債券投資からの収益は低くなる可能性が高い。
5年物と1年物(10年物の方が短いので5年を選択)は上記のように長期に下落している。(収益性が低くなっている。)
緑色の面チャートは右軸に目盛を取っており、5年の利回りから1年の利回りを引いたスプレッドを表す。 (短期(1年)で調達し、長期(5年)で運用の利益を表す。)
こちらも長期的に縮小傾向であり、この長短のスプレッドの縮小も金融機関が利益を出すのが難しい要因でもある。
【この期間の債券利回りの特徴】
- 全体的に下落トレンドを見せている。2000年に入ってからは低金利時代に突入
- 過去においては1年が10%を超える時代もあった。
- 1年が5年よりも高い、逆イールドの時代も見受けられる。
- 大きな上昇は2つ昭和55年、平成2年あたりに上昇局面が見られた。
- 5年1年スプレッドは縮小傾向で1996年あたりをピークに減少し0に近くなっている。
もっと最近の10年物の国債利回り(長期金利の代表)は以下のように推移している。
【2014年の10年物利回り】
金融緩和の継続で、2014年を通して下落傾向が続いている。
9月にやや上昇を見せている。しかしそれでも0.05%程度の上昇であり、 中長期で見ると僅かな上昇である。
日銀の指摘するようにインフレが年末にかけて加速し始めると、金利もやや上昇をすることもあり得るが、
日銀の引受姿勢を考えると大きな上昇はまだまだ考えにくい。地政学的な混乱、海外市場での大きなショックがない限りは急激な上昇は考えにくい。
最後に、金利の市場参加者の見方を示すものの一つに金利キャップのボラティリティがある。
下記は過去5年のキャップのボラティリティと1年のスワップレートの推移である。
金利キャップとは、その買い手が売り手に対してオプション料(オプションプレミアムという)を支払うことにより、契約期間中の各金利更改日に基準金利が上限金利を上回った場合、その差額を受け取ることができる。
簡単に言うと、とり決めたレートよりも金利が上がった場合に、その金利の差分の利息を受け取ることができる取引で、キャップを買うと金利があがると得をするということだ。
ボラティリティとはある商品(価格・レート)の一定期間の変動を年率に換算した指標。その金融商品の想定される価格の変動の大きさを表す。一般的に価格の変動幅が大きくなるとボラティリティも増大します。ボラティリティが高いとオプション料が増加、上記のキャップの例だと、キャップの価格が高くなります。
【過去5年の1年物スワップ金利と1年キャップボラティリティ】
金利は5年間小さい上昇局面はあったとしても、ほぼ一貫して下落傾向を見せている。
キャップボラティリティ(市場参加者の金利上昇についての警戒心ともいえる)は2012年の終盤にやや高くなり、金利上昇を警戒する動きが出た。
しかし2013年に入り、金利上昇についての期待(不安)は次第におさまり、やや落ち着いてきていた。
2013年末から2014年に入って、参加者は金利上昇はしばらくはないと思いながらも、
金融危機直後に比べると上昇の懸念をやや強めに持っている。
参加者は確実に金利上昇を警戒してきている。米国金利が上昇し始めると、少しづつ金利の上昇について備えなければならない。
住宅ローン等のローン金利や定期預金等の預金金利が個人には直接的に関係するが、
株価や景気そのものにも大きな影響があるので、時々確認してみよう!